「人治国家中国のリアル」第3章の内容紹介

日本の常識はまだまだ中国の非常識

日本企業が中国で失敗するワケ

 ここで、日本企業の中国への進出状況がどのようになっているのかを確認しておきましょう。
2010年3月31日の時点で、中国に拠点を置く日本企業は、すでに1万社を超えており、そのうち半数近くを製造業が占めています。進出地域は、主として珠江デルタ、揚子江デルタ、北京、天津及びその周辺、大連及び山東の沿海部に集中しています。
雇用状況から見ると、現在(2010年4月〜6月期現在)、総雇用人数は約123・2万人。そのうち電機機械製造は57・9万人、輸送機械製造は24・9万人、汎用機械製造は14・8万人、化学加工は3万人(経済産業省「海外現地法人四半期調査」)となっています。
また、第2章で見たように、外資企業の参入が認められる業種はどんどん拡大しています。結果、中国でビジネス展開する日本企業の業種も多様化の傾向を強めています。最近は、消費市場として今後大きく広がることが期待できる分野への進出が目立っています。
たとえば、日本と同様、中国でも社会の高齢化が進んでおり、医療に対するニーズが高まっています。他方で、所得水準も上がっていることから、高価であってもより質の高い医薬品や医療機器を求めている人がかつてに比べ増えています。そうした需要に応えるために製薬会社や医療機器メーカーの進出が盛んになっています。
さらに、サービス業の中国投資が活発化しているのも最近の特徴です。業種はレストランやコンビニエンス・ストア、ITやコンサルティング関係など様々です。
それに加えて、コンテンツ産業の進出も徐々に増えています。私の事務所でも現在、複数の大手テレビ局から、中国のライセンスビジネスに関する依頼を受けています。日本のテレビ局で制作されたテレビ番組のリメイク権を中国のテレビ局へ販売する案件や、日中のテレビ局が共同で新たな番組制作を行なうためのサポートなどを進めているところです。

安易な気持で中国ビジネスを始めれば失敗する可能性が高い

 このように多くの日本企業が中国に進出し、業種も多様化している現状がある一方で、中国でのビジネス活動が思うようにいかず、撤退を余儀なくされる企業も後をたちません。その表向きの理由は個々のケースに応じて様々でしょうが、私の見る限り、中国ビジネスに失敗する企業には大きな共通点があるようです。すなわち、中国で成功を収めないまま撤退する企業の経営者には、中国進出を非常に安易に考える傾向が見うけられるということです。
中国進出について最初に相談をうけるときに、私は、いつも以下のような問いかけをしています。
「中国進出は貴社の今後のビジネスにどのような意味を持っていますか」「中国市場で現在どの程度のシェアを占めていますか」「中国におけるコンペティター(競争相手)としてどのような会社がありますか」
———このときに、経営者が中国という国をしっかりと調査・分析して進出を決めたというわけではない企業からは、明確な答えは返ってきません。相談に来たプロジェクト担当者の口からは、「上司からいわれたので」「中国市場は無視できないから」とまるで他人事のような言葉が出てくるばかりです。
極端な場合には、経営者が、日本国内ですら行なっていないビジネスを中国で行なうよう命じているケースもあります。命令を受けて動いている現場の担当者は、はなから「日本でやっていないことを中国でやってもうまくいきっこない」と思っており、いやいや進めているのが第三者の目から見ても感じられます。こういうケースはほぼ間違いなく事業が思うようにいかず、中国で現地法人を起こしてから数年程度で「中国進出を決めた先代の社長がいなくなったので……」などと適当な口実をつけて撤退する場合がほとんどです。
中国ビジネスは、こんないい加減な姿勢でうまくいくほど甘いものではありません。会社として本当に中国での事業の必要性を感じ、優秀な人間が担当者となりやる気をもってプロジェクトを進めなければ、中国進出は高い確率で失敗するということを肝に銘じておくべきです。