「人治国家中国のリアル」第5章の内容紹介

これからの中国、これからの日本

中国法務専門弁護士との二人三脚で、中国ビジネスに勝利する

 中国に進出しているのは日本企業だけではありません。特に、2008年のリーマンショック以降は、世界各国の企業が生き残りをかけて中国市場へ殺到しています。日本企業の間では「とにかく中国に進出すれば何とかなる。特別な策などいらないだろう」と安易に考える風潮も見られますが、それでは死にものぐるいで中国ビジネスに挑んでいる各国企業との競争に勝つことは難しいでしょう。
たとえば、アメリカ企業は、「中国は理解しがたい国である」という認識と警戒心のもと、中国法務に通じた弁護士と二人三脚で綿密に戦略を練って対中ビジネスに臨んでいます。もともとアメリカでは、弁護士と広告会社(PRエージェント)はビジネスを行なううえで必須のパートナーと考えられています。アメリカの企業社会では、どのような取引であっても、何か法律上の問題がないか、事前に弁護士のチェックを受けることが習慣となっています。
そのため、中国ビジネスに関しても、法律事務所からのアドバイスを当然視していますし、必要があれば弁護士費用がかかるのもやむを得ないと考えています。前述のように(本書第1章参照)中国の地方で裁判を戦う場合、勝訴するためには地元の中国人弁護士が必要です。さらに絶対に負けられない重要な意味を持った訴訟であれば、必勝を期して、北京、上海、広州等の一流弁護士事務所に所属する中国人弁護士も雇う必要があります。したがって、地方での訴訟で確実に勝とうとするならば、単純に考えて通常よりも弁護士費用が2倍かかることになります。それでも訴訟に勝つためであれば、アメリカ企業はそれだけの費用を惜しみなく支払います。
しかし、日本企業は一般に弁護士に費用をかけることを好みません。私が地方での裁判では地元の弁護士がいかに不可欠かを説明したような場合でも、「北京の大手法律事務所の優秀な弁護士がいれば十分ではないか。それ以上余計なお金をかけるつもりはない」と消極的な態度を示される場合が少なくありません。

弁護士を中国進出プラン策定の段階から関与させる

 経営者が訴訟に勝つために不可欠な支出すら惜しむようでは、弁護士を積極的に活用し、その力を借りて大胆なビジネスプランを立案し次々と実行していくアメリカ企業相手に、日本企業が勝利を収めることなど、到底できないでしょう。
日本企業が欧米企業と競争しながら中国市場で成功を得るためには、やはり進出時に、中国のビジネス状況、法律、政府の政策などを踏まえた綿密なプランを策定する必要があります。そのプランを立案する段階では、ぜひ、中国法務を専門とする弁護士の意見を聞くことも検討してみてください。
私に限らず、中国法務を専門としてきた弁護士は、中国の法制度はもちろん、中国人のビジネス習慣、各業種における慣習などビジネス的な面にも深く通じている場合が少なくありません。それはすでに述べたように、そうしたビジネス上の事情についても十分に理解していなければ、中国法務を扱うことは難しいためです。
また、新規プロジェクトを立ち上げる計画段階から法律の専門的な知識を活用できれば、プロジェクトの問題点や改善点について、法律面はもちろんビジネス面からも有益な解決策が期待できるはずです。

過去の失敗を検証し中国へ再進出する企業も

 今、ほとんどの事業分野において中国市場をまったく無視してはいられない状況の中で、かつて中国への進出に失敗しながら、再びそれにチャレンジすることを計画している企業もあるかと思います。
実際、私の事務所でも、過去に中国ビジネスを試みたが成功せず、経営者が「うまくいかなかったから二度と中国には行きたくない」「中国ビジネスは危険だからやりたくない」というような考えを持っていた企業からも、最近、再進出の相談を受けることがあります。
相談を受けた中には、過去に中国政府の逆鱗に触れて、合弁企業の営業の許可を取り消されたような会社も含まれています。さすがにそのような企業は、二度と同じ轍を踏まないよう、法的な問題、政策面の問題を慎重に検証しながら、それこそ石橋をたたいてわたるような気持ちで進出計画を進めています。
しかし、他方では、なぜ失敗したのかをまったく反省せずに再進出しようとしている企業も見うけられます。そのような企業は、まず間違いなくまた同じような失敗を繰り返し、結局また中国から撤退する羽目になるでしょう。
そうならないためにも、これから中国への再進出を考えている企業は、過去の失敗の原因を徹底的に分析して、「今度は絶対に失敗しない」といえるだけの万全の体制で臨むことが求められます。