ビックリ仰天!中国事情 当事務所弁護士 鈴木 龍司執筆コラム

第1回 汝吸うなかれ

「鈴木さん、あなたも1本いかがですか?」


中国では自分がたばこを吸うとき、特に宴会の席などでは、お酒を勧めるのと同じように同席している相手にたばこを勧めます。私自身はたばこを吸いませんので、毎回断ることになってしまいますが、日本と中国の間で多少の波風が起きても、このようなシーンにはよく出くわしました。これまでは・・・


今後、北京では宴会の席でこのようなシーンを見られなくなりそうです。しかし、それは、何か政治的な意図が込められているわけでも、北京人がケチになったわけでもありません(と信じています)。中国でもっとも厳しいと言われる「北京市喫煙管理条例」が、6月1日から施行されたからです。

 

同条例は、室内については自宅等のプライベートスペースを除き全て禁煙、一部の建物(幼稚園、小中学校等)については室外も禁煙、また公共交通機関内も禁煙とし、さらに路上での待ち時間も他人がいるなら禁煙ということになっており、それを破れば過料(最低50元(約1000円)、最高200元(約4000円))が科されます。しかも、違反の発見者は誰でもどこでも、「12320」への電話や、ウィーチャットの「無煙北京」の公式アカウントへの写真の投稿により、通報や苦情を訴えることができることとされており、喫煙大国の中国では考えられないほど喫煙者にとっては厳しい内容となっています。


ここで、「待てよ。では、レストランの個室やホテルの客室はどうなんだ?公共の場とはいえないのではないか?」との疑問が湧きますが、上記「12320」に電話で確認してみたところ、「レストランの個室はもちろん、ホテルの客室も一時使用するだけで、その者のプライベートスペースとはいえないので、ダメ」との回答でした。

 

条例施行後の北京の街を見てみると、これまでオフィスビル内にあった喫煙室が撤去されていたり、カフェにあった喫煙スペースがなくなったりしています。また、多くの建物の至る所(トイレや階段など)に喫煙を禁止する標示と「12320」の電話番号の表示が掲示され、建物の外には喫煙スペースの設置とともに、ご丁寧に「喫煙は健康を害します」との標示が掲示されています。
さらに、聞くところによれば、あるオフィスビルでは各会社に対して、「従業員の喫煙を厳しく管理すること。仮に所属従業員が喫煙しているところを発見した場合、敷金から50元を差し引く」趣旨のお達しがあったようです。喫煙の管理を十分に行っていない場合、オフィスビルの管理者も責任を問われるため、オフィスビル側もナーバスになっているようですね。。。

 

ちなみに、日本に目を移すと、平成14年(2002年)に公布された「千代田区の生活環境の整備に関する条例」を皮切りに路上喫煙の規制が始まり、また、神奈川県では、平成21年(2009年)に「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」が公布され、同条に基づき禁煙施設とされている一部の公共的施設(学校、病院等)及び分煙とされた一部の公共的施設(レストラン、ホテル等)の禁煙スペースでの喫煙が規制されていますが、まだ喫煙者にとっては優しい国といえそうです。


もっとも、世界では、アメリカの多くの州やイギリス、アイルランド、香港など、室内を全面禁煙とする国も多く、先進国で室内が全面禁煙でないのは日本くらいと言われるほどで、「北京市喫煙管理条例」は、むしろそうした世界の潮流に沿うものであると言えます。

いずれにしても、冒頭で述べたように、今後、北京では宴会の席でたばこを勧められることがなくなりそうですが、仮に、宴会の席でたばこを勧められてもその場でたばこに火をつけてはいけません。うっかりたばこに火をつけた姿が写真に撮られたら、その写真がウィーチャットで投稿されるかも・・・

2015/07/08

*本記事は、中国関連の一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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