第8回 取締役会(董事会)における招集手続の日台の違いについて

日本の会社法(以下「日本法」といいます。)においても、台湾の会社法(以下「台湾法」といいます。)においても、取締役会(董事会)は会社の意思決定をする上でとても重要です。今回は取締役会(董事会)の招集手続の違いを見ていきましょう。

1 招集権者

日本法においては、取締役会は各取締役が招集します(日本法第366条第1項本文)。しかし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めることができます(日本法第366条第1項但書き)。

台湾法においては、董事会(日本法の取締役会に相当)は董事長(日本法の代表取締役に相当)が招集します(台湾法第203条の1第1項)。

また、各期の最初の董事会は董事の選挙において最多票を得た董事により改選後15日以内に招集されます(台湾法第203条第1項)。

2 招集請求

日本法においては、招集権者として定められた取締役以外の取締役は、招集権者に対して取締役会の目的である事項を示して取締役会の招集を請求することができます(日本法第366条第2項)。

上記請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした取締役は取締役会を自ら招集することができます(日本法第366条第3項)。

台湾法においては、過半数の董事は、董事長に対して書面に提議事項と理由を記載して董事会の招集を請求することができます(台湾法第203条の1第2項)。

上記請求後15日以内に董事長が董事会を招集しない場合には、過半数の董事は董事会を自ら招集することができます(台湾法第203条の1第3項)。

このように、招集権者ではない者による招集請求について、台湾法では過半数の董事による書面による請求が必要な点で、日本法より厳しくなっています。

3 招集通知の発送時期

日本法においては、取締役会の日の1週間前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければなりません(日本法第368条第1項)。しかし、定款の定めによってはその期間を短縮することが可能です(同項括弧書き)。

台湾法においては、董事会の日の3日前までに各董事と監査役に対してその通知をしなければなりません(台湾法第204条第1項)。しかし、定款の定めによってはその期間を延長することが可能です(同項但書き)。

このように、日本法と台湾法では定款によって定められる招集通知の発送時期の調整方法(短縮・延長)が反対になっています。

4 通知事項

日本法においては、招集通知の際の通知事項について特に定めがありません。そのため、臨時動議によって招集通知に記載されていない事項が取締役会で審議・議決されたとしても当該決議は違法とはならないと解されています(名古屋地方裁判所平成9年6月18日判決参照)。

台湾法においても、招集通知の際の通知事項について特に定めがありません。株主総会では、臨時動議について制限する規定がありますが、董事会ではこの規定がないことを理由に臨時動議は違法とはならないと解されています(経済部74年商字第07805号函参照)。

このように、通知事項については、日本法と台湾法では同様の取り扱いになっていると解されます。

なお、台湾では、金融監督管理委員会(日本の金融庁に相当する機関)により公表された「コーポレート・ガバナンス問答集─董事会議事方法編(中国語では公司治理問答集─董事會議事辦法篇)」においても、臨時動議の存在が認められている記載があります。

日本法 台湾法
招集権者 取締役会は各取締役が招集(日本法第366条第1項本文)

取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めた場合は、その定められた取締役が招集(日本法第366条第1項但書き)
董事会は董事長が招集(台湾法第203条の1第1項)

各期の最初の董事会は董事の選挙において最多票を得た董事が、改選後15日以内に招集(台湾法第203条第1項)
招集請求 招集権者として定められた取締役以外の取締役は、招集権者に対して取締役会の目的である事項を示し、取締役会の招集が請求可能(日本法第366条第2項) 過半数の董事は、董事長に対して書面に提議事項と理由を記載し、董事会の招集が請求可能(台湾法第203条の1第2項)
招集請求後5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした取締役は取締役会を自ら招集可能(日本法第366条第3項) 招集請求後15日以内に、董事長が董事会を招集しない場合には、過半数の董事は董事会を自ら招集可能(台湾法第203条の1第3項)
招集通知の発送時期 取締役会の日の1週間前までに、各取締役(監査役設置会社は監査役も)に通知(日本法第368条第1項) 董事会の日の3日前までに、各董事と監査役に通知(台湾法第204条第1項)
定款の定めによっては短縮することが可能(同項括弧書き) 定款の定めによっては延長することが可能(同項但書き)
通知事項  招集通知の際の通知事項について特に定めなし 招集通知の際の通知事項について特に定めなし
臨時動議は違法とはならない(名古屋地方裁判所平成9年6月18日判決参照) 臨時動議は違法とはならない(経済部74年商字第07805号函参照)

                                   以上


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 三代川 英嗣

法科大学院において知的財産法のゼミに所属した際、中国をはじめアジアの法律家との交流を重ねたことをきっかけに、渉外法務、知財法務を専門とすることを志し、司法試験では知的財産法科目1位で合格。司法修習修了後、上海の復旦大学に短期留学し中国語および中国法を学習。 今後は中国法、台湾法、知財法のみならず、ビジネスやテクノロジーについての理解を深め、クライアントに最適なリーガル サービスを提供できるよう、日々努力を積み重ねていきたいと考えている。