第91回 「保険販売行為管理弁法」の解説
2023年9月20日、国家金融監督管理総局が「保険販売行為管理弁法」を公布し、2024年3月1日より正式に施行された。同弁法の公布は、近年の中国の保険監督管理体制における重要な制度改定の一つと見なされている。同弁法は全6章50条からなり、その核心的な目的は、保険販売行為の規範化、消費者の適法な権益の保護、そして保険業界を「粗放な販売」から「専門的なサービス」へと転換させることにある。
長年にわたり、中国の保険市場は急速な発展を遂げる一方で、多くの販売の乱れを伴ってきた。例えば、一部の販売員による収益の誇張、免責条項の隠蔽、一部の銀行チャネルでは「預金が保険に変わる」との問題、インターネットプラットフォームではデフォルトのチェックボックス選択、加入への誘導があるといった現象が広く存在している。こうした問題は消費者の権益を損なうだけでなく、保険業界に対する公衆の信頼を弱めている。そのため、監督管理部門はガバナンスの重点を「商品の監督管理」から「販売行為の監督管理」へとさらに拡大し始めており、同弁法はまさにこのような背景の下で公布されたのである。
従来の制度と比較して、同弁法の最大の特徴は、「販売前、販売中、販売後」の3つの段階に従って、保険販売活動に対するプロセス全体の規範化を初めて行った点にある。その監督管理の重点はもはや「商品を販売したかどうか」だけでなく、「どのように販売するか」に置かれている。
一、主な内容
1、弁法の販売主体は厳格に限定されている
「弁法」は、保険会社、保険仲介機関及び法に基づき登記された保険販売員のみが保険販売活動に従事できる旨を明確に規定している。これは、過去に監督管理から外れていた「副業での保険販売」や「SNSの個人的な繋がりを利用した保険推奨」といったグレーな販売モデルが、より厳格な制限に直面することを意味している。また、監督管理部門は、販売員の登記及び管理を強化し、責任の所在を追跡する仕組みを強化し、代理人の職業化を推進することを保険機関に求めている。
2、「商品の等級分け+人員の等級分け」制度の確立
「弁法」は、「商品の等級分け+人員の等級分け」制度を確立している。保険会社は、商品の複雑さやリスク等級に基づいて分類を行う必要があり、異なる等級の販売員は該当する等級の保険商品しか販売できない。例えば、構造が複雑でリスクが高い配当型保険、ユニバーサル保険、投資連動型保険などの商品は、専門的な能力を持たない販売員がむやみに推奨・販売することはできなくなる。この制度は実質的に保険販売のハードルを引き上げており、保険業界が「大量の代理人に依存して規模を追求する」という過去の粗放なモデルから徐々に脱却することをも意味している。
3、「適合性義務」の強化
「弁法」は保険販売における「適合性義務」を初めて体系的に強調している。「弁法」は、単に販売実績を追求するのではなく、顧客のニーズ、リスク許容度及び財務状況を十分に理解した上で、適した保険商品を顧客に推奨することを保険機関に求めている。例えば、高齢の顧客、リスク許容度の低い顧客に対して、複雑な投資型保険の購入を誤導してはならない。これは、中国の保険販売が正式に「適合性監督管理」の段階に入ったことを示しており、その論理は銀行の資産運用商品、証券投資における投資家適合性制度にすでにかなり近づいている。
4、強制的な抱き合わせ販売とデフォルトのチェックボックス選択の厳禁
消費者が最も関心を寄せる販売行為の側面についても、「弁法」は明確な制限を設けている。強制的な抱き合わせ販売、デフォルトのチェックボックス選択、加入への誘導などの行為を禁止し、必ず真の意思に基づいて購入することを消費者に求めている。特にオンライン販売の場面において、過去によく見られた「自動的な保険の付帯」、「デフォルトでの条項への同意」といったモデルは、厳格に制約されることになる。
5、情報開示義務の強化
「弁法」はさらに、保険販売プロセスにおける情報開示義務を強化している。販売員は顧客に対し、保険責任、免責条項、解約による損失、クーリングオフ期間及び収益の不確実性などの重要な内容を明確に説明しなければならず、収益のみを宣伝してリスクを回避することはできない。これは事実上、過去の保険販売における「マーケティングを重視し、説明を軽視する」との問題を是正するものである。
6、販売後の管理の強化
注目すべきは、「弁法」が販売プロセスを規範化するだけでなく、監督管理を販売後の段階まで拡大している点である。例えば、長期保険商品について、保険会社は契約後のフォローアップ確認を行い、顧客が商品の内容を本当に理解しているかを確認しなければならない。また、販売員が離職した後も、悪意を持って解約や乗り換えをするよう顧客を誘導してはならない。こうした規定は、監督管理の考え方が「契約したら終わり」から「長期的な消費者保護」へと転換していることを示している。
二、保険業界への影響
業界への影響から見ると、「弁法」は短期的には保険会社のコンプライアンス及びトレーニングのコストを増加させ、一部のチャネルの販売効率を低下させる可能性もあるが、長期的には、販売トラブルの減少、業界イメージの改善に役立ち、保険業界が専門化、サービス化の方向へ発展することを後押しするものである。保険代理人にとって、将来の業界競争も「話術や人脈を競う」ことから「専門性やサービスを競う」ことへと転換することになる。
全体的に見ると、「弁法」の施行は、中国の保険監督管理が単に商品や機関だけでなく、販売行為そのものを一層重視し始めたことを意味している。これは単なる監督管理ルールの整備にとどまらず、保険業界の発展論理の調整でもある。将来的に、保険販売はますますコンプライアンス、専門性及び消費者保護を強調するようになり、保険業界も「販売主導」から「サービス主導」へと徐々に移行していくことになる。
以上
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