第80回 「出張中にくじ引きでビデオカードに当選し辞職に追い込まれた」事案から考える(一)~賞品の帰属先は従業員自身か、それとも会社か?

今回は、最近上海で発生した注目の話題についてお話ししたいと思います。ある会社の従業員の金さんが仕事で出張し展示会に参加した時に、自らの意思でくじ引きイベントに個人の名義で参加し、3000元のビデオカードが当たった後同僚に会社に引き渡す必要があると言われ、その後会社も金さんと面談を行い、引き渡すよう求めたというものです。会社はビデオカードを引き渡すよう直接強要することはしなかったものの、金さんに対し「もっと良い仕事を探す」よう勧めました。金さんは関連する規則制度が会社にないことを主張し、引き渡しを拒否しましたが、最終的に金さんが依願退職するという結末になりました。

この職場トラブルは、実際には「職務上の行為と個人の権益」についての法的定義の核心に触れています。今回は、中国の「民法典」、「労働契約法」及び司法判例と結びつけて簡単に分析します。

一、賞品の帰属についての法的判定:核心は「行為の性質」と「権利主体」にある

出張期間中の当選品の帰属について定義するには、まず、くじ引き行為の法的属性及び参加主体の権原という二つの法的前提を明らかにする必要があります。

  1. くじ引き行為の性質の法的定義

中国の「民法典」契約編の関連規定によれば、くじ引きイベントは一種の民事行為であって、その核心的特徴は「機会を目的とする」点であり、すなわち、契約の効果を契約締結時に確定することができない「射幸契約」で、権利義務の発生は偶然の当選結果に依存しています。このような契約の成立と履行については、「特定の民事主体」を前提とする必要があります。例えば、上記の事例におけるイベントのルールでは「現地の観衆のみが対象」「スタンプカードの受領は一人一枚のみ」であることが明確にされており、権利主体を「展示会出展企業」ではなく「個人」に限定することが明確になっています。これは、賞品の帰属の判定における重要な根拠となります。

  1. 職務上の行為であるか否かも判断基準の一つ

中国の司法実務における本件の類似事例では、裁判所は通常、「職務上の行為」に該当するか否かを三つの側面から判断して、権利帰属についての認定の基盤とします。

まず、くじ引きへの参加について会社から明確な指示を受けていたか否かです。会社が従業員に対し、「会社の代表」としての身分でくじ引きに参加するよう書面又は口頭での要求をしていなかった場合、従業員が仕事でその場にいたことのみを理由に権利を主張するのは、法的根拠を欠いています。

次に、会社の資源を利用してくじ引きの資格を得たのか否かです。本件において、金さんは仕事の合間を縫って自らスタンプを集めており、会社の資金、名義又は顧客資源を使用しておらず、「職務上の行為は会社の資源に依存している必要がある」という要件を満たしていません。

最後に、賞品の帰属について事前に約定していたか否かです。会社がその適法に制定公表した規則制度において、職務の遂行期間中にくじ引きで当選した賞品は会社に引き渡すとの定めをしていた場合、又は、主催者が明確に賞品を「ビジネスギフト」としていた(例えば「XX社に贈呈」と明記していた)場合には、会社の財産となる可能性があります。しかし本件では、会社には関連する規則制度がなく、権利の証拠となるくじ引き用カードにもその個人情報が記入されており、ビデオカードも金さん個人に直接渡されていることから、動産物権の「占有によって決まる」(交付+受領)という特徴に合致しています。

過去の判例を見ると、2017年に深圳で張さんという人が勤務先の社長の代わりに顧客の晩餐会に参加し、くじ引きで現金3000元に当選したという事件で、裁判所が「くじ引きは出席した個人が対象である」、「原告は被告によるくじ引き券の受領、くじ引きへの参加及び賞金の受取が原告を代表してのものであることを挙証により証明できていない」として会社の請求を棄却した例もあります。

以上


*本記事は、一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。