第93回 モーメンツでの発言にはご注意を


WeChatは現代社会において欠かせないソーシャルツールとなり、人々の自由な表現を豊かにしています。しかし、同時に注意すべきは、表現の自由にも越えてはならない法的な一線があるということです。一度その「一線」を越えると、権利侵害を構成し、相応の法的責任を負う可能性があります。

最近、上海市浦東新区で発生した訴訟は、「一線」を越えた発言によって権利侵害が成立した代表的な事例です。

一、事件の概要

「00後(2000年代生まれ)」の従業員Xは退職後、WeChatのモーメンツ(タイムライン)にて、元上司を「四十歳の老登(老いぼれ)」「加齢臭がする」と表現し、さらに「隙を見て私にちょっかいを出そうとした」「意図的に給与の支払いを遅らせて精神的なプレッシャーをかけた」「退職に追い込んだ」などと非難する投稿を行い、末尾には「安らかな晩年を過ごせますように」と記しました。

元上司は、上記の発言が名誉権侵害を構成するとして、上海市浦東新区人民法院に提訴し、投稿内容の削除、謝罪広告の掲載、ならびに経済的損害、精神的苦痛に対する慰謝料、弁護士費用の賠償を求めました。これに対しXは、自身のモーメンツは「元同僚のみ表示」および「3日間表示」に設定されており、公開範囲は限定的であり、悪意はなかったと主張しました。

最終的に、裁判官と専門調停員による法理の説明と調整を経て、双方は調停に合意し、Xはモーメンツに謝罪文を掲載し、これを履行済みです。

二、法的分析

本件の争点は、「公開範囲を限定したソーシャルプラットフォーム上での貶める内容の発言が、名誉権侵害を構成するか」という点にあります。

『中華人民共和国民法典』第1024条によれば、名誉権とは、民事主体が自身の属性および価値について社会から受ける評価を保持・維持する人格権です。名誉権侵害の成立要件としては、通常以下のものが挙げられます。

・行為者が侮辱・誹謗などの違法行為を実施したこと
・侵害対象が特定されていること
・違法行為によって被害者の社会的評価が低下したこと
・行為者に過失または故意があること

本件において、Xの発言は以下の2つに分類できます。

  1. 「老いぼれ」、「加齢臭」などの表現——これらは侮辱的な言葉に当たり、年齢を貶める意味合いを含んでおり、たとえ個人的な感情表現に由来するものであっても、合理的な表現の範囲を超えています。
  2. 「ちょっかいを出そうとした」「意図的に給与の支払いを遅らせた」「退職に追い込んだ」などの陳述——これらは事実に基づく主張であり、立証できない場合は誹謗を構成する可能性があります。

裁判所は予備審査の段階で、Xがこれらの主張を裏付ける証拠を提出していないことを、権利侵害の可能性を認める重要な根拠としました。

Xの「公開範囲は限定的である」という抗弁について、裁判所は、表示範囲を限定することは、権利侵害責任を免れる理由にはならないと判断しました。モーメンツで「元同僚のみ表示」と設定することは、かえって当該発言が特定の仕事関係のコミュニティ内で広まることを意味し、そのコミュニティこそが、元上司の経営者としての社会的評価に関わる最も関連性の高い集団です。社会的評価が低下するリスクは、「不特定多数の公衆に対して公開されること」を必要条件とするものではないと判断しました。

三、本件からの教訓

本件から分かるように、モーメンツなどの半公開の場において、特定の対象を貶める発言を行った場合、たとえ表示範囲を設定していても、名誉権侵害を構成する可能性があります。

従って、他人の品性や人格に関わる事実の陳述については、発信者は基本的な確認義務を負います。また、感情的な表現であっても、侮辱的・人格を貶めるような語彙の使用は避けるべきです。インターネット上での表現は、理性的かつ慎み深くあるべきであり、それは他者の権利を尊重することであると同時に、自身の法的リスクを未然に防ぐことでもあります。


*本記事は、一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。