インドネシアの新投資制度:通信、メディア及びテクノロジー セクター

 オムニバス法として知られる、雇用創出に関する2020年法律第11号により導入された新しい投資制度に続き、インドネシア共和国大統領は、今やポジティブリストとして促進されている事業投資に関する新たな法的枠組み(2021年大統領令第49号により改正された、投資事業分野に関する2021年大統領令第10号(「PR102021」又は「ポジティブリスト」))を発行しました。

 PR 10/2021には、インドネシアの外国直接投資(FDI)制度への実質的変更点が明記されています。そこには、外国投資に対して完全に閉鎖されているか、明示的に中央政府に留保されているという記載がない限り、すべての事業セクターが外国投資の対象として開放されることが概ね規定されています(PR 10/2021第2条(1))。

 FDI制度が大幅に変更されたことから、今回、本稿における分析では、特にテクノロジー、メディア及び通信「TMT」)セクターに焦点をあてます。

【法的枠組み】
本稿にまとめた内容は、下記の現行規則に対するものです。

 1.閉鎖されているか、投資の条件付きで開放されている事業分野一覧(投資ネガティブリストとして知られる)に関する2016年大統領令第44号(「PR 442016又は「NIL」)を廃止し、これを差し替えたPR 10/2021、及び

 2.2020年インドネシア標準産業分類(「KBLI 2020」又は「KBLI」)に関する2020年中央統計庁長官規則第2号。

通信事業活動: PR 10/2021は、固定/モバイル通信ネットワーク等の各種通信事業活動に関する外資所有制限を撤廃しています。以前、これらのセクターについては、外資所有の上限が67%に制限されていました。

 上記の変更を受け、外国投資家は、インドネシアのパートナーとの合弁事業を立ち上げる必要なく、通信会社における持分を増やしたり、自ら各種通信事業に参入したりできるようになりました。ただし、注記しますと、株式保有構成を変更する場合には、各通信許可保有者に適用される義務の充足に応じ、事前に、通信情報省の承認を受けること、及び/又は同省に報告することが必要です。

 以下は、参照の便宜のため、NILと新ポジティブリストにおける外資所有上限を比較したものです。

事業活動

関連KBLI

外資所有上限

NIL

ポジティブリスト

固定通信ネットワーク

61100

上限67%

無条件で開放

モバイル通信ネットワーク

61200
61300

上限67%

無条件で開放

通信サービスと統合された通信ネットワーク

61921
61922
61923
61929

上限67%

無条件で開放

通信コンテンツサービス

61911

上限67%

無条件で開放

コールセンター及び付加価値電話サービス

61919

上限67%

無条件で開放

インターネットサービス プロバイダ

61921

上限67%

無条件で開放

データ通信システムサービス

61922

上限67%

無条件で開放

一般向け電話インターネットサービス

61923

上限67%

無条件で開放

インターネット相互接続サービス(NAP)及びその他マルチメディアサービス

61929

上限67%

無条件で解放

通信タワーの提供、運営及び保守サービス、並びに建設サービス

42217

100%外国投資に閉鎖

中小零細企業(MSME)又は協同組合に割り当てられている簡易的又は中程度の技術を用いた通信会社のタワー建設(KBLI 43212)を除き、無条件で開放


メディア及び放送事業活動:
PR 10/2021により、上場会社の場合、新聞、雑誌、会報発行活動(KBLI 58130)には、49%を上限とする外資所有が認められるようになりました。(以前、当該KBLIは完全に内国投資に留保されていました。)

 一方、株式非公開の有料放送活動(KBLI 60102, KBLI 60202)における外資所有に対する厳格な制限については変更なく、運営資金の調達又は事業拡大に関する外資所有20%という上限が今までどおり適用されます。

デジタルプラットフォーム事業活動: ポジティブリストにより、商業目的のウェブポータル及びデジタルプラットフォーム(すなわち、マーケットプレイス、オンデマンド オンラインサービス、その他商業的デジタルプラットフォーム等)(KBLI 63122)は、100%外国投資に開放されることとなり、投資額に関する要件は一切ありません。以前は、投資額がIDR 100,000,000,000(一千億ルピア)以下のプラットフォームの場合、外資の上限は49%に制限されていました。

TMTセクターのポジティブリストに対するNLPのコメント: インドネシア政府は、オムニバス法を通じた投資の促進、雇用機会の創出、及び国内経済の増強に向け、大きく踏み出しています。そのうちの一歩が、TMT、エネルギー、観光等を含む多くのビジネスセクターにおける外資所有制限の上限撤廃です。

TMTセクターに対する外国直接投資の大幅な緩和は、外国投資家を惹きつけるであろうと同時に、インドネシア経済、特にデジタルインフラセクターの発展にプラスの影響を及ぼすものであると弊職らは確信しています。

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本稿の情報は、一般的な性質のもので法的助言として扱われるべきものではなく、いずれの者もいかなる状況にも本稿の情報に依拠してはならない。特定の状況に対応するには、関係者が具体的な法的助言を求める必要がある。


*本記事は、一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆】
Nusantara Legal Partnership
Marshall Situmorang(パートナー),Audria Putri(シニア アソシエイト),
Aniendita Rahmawati(アソシエイト)