第112回 フィリピンにおける女性従業員の出産に関する給付拡大

皆さん、こんにちは。Poblacionです。フィリピンで雇用されている女性に朗報です!先般、共和国法第11210号、いわゆる「105日産休延長法」が施行されました。その名称から推察されるとおり、同法の目的は、女性従業員の出産に関する給付を拡大することです。これは、働く女性の権利と福利厚生を推進及び保護し、働く女性のもつ潜在能力が完全に発揮される環境を整えようというフィリピン政府の方針に沿うものです。従いまして、フィリピン国内で事業を運営し、そこで女性従業員を雇用している方であれば、労働法におけるこのような最近の発展について、認識しておかれた方がよいでしょう。

旧法の下では、自然分娩や流産の場合には60日、帝王切開による出産の場合には78日の出産休業が、女性従業員に認められていました。産休中の手当は、本人の平均給与日額の100%に相当する金額でした。一定の要件を満たせば、社会保障制度(SSS)から産休手当が支給されますが、まずは雇用主が、産休申請が行われてから30日以内に当該手当を支給する必要があります。

新法は、以下の点で、女性従業員の出産に関する給付を拡大しました。

  • 女性従業員に対し、手当が全額支給される105日間の出産休業に加え、手当を伴わない30日間の追加休業の選択権が認められた。産休は、産前産後を合わせた形で与えられるが、全体で105日を超えないこと、及び産後の休業を60日以上とすることが規定されている。
  • 女性従業員が法律上の「一人親」に該当する場合、手当が全額支給される15日間の出産休業が追加で与えられる。
  • 流産又は異常事態による妊娠終結の場合、女性従業員には、手当が全額支給される60日間の出産休業が認められる。
  • 女性従業員には、7日を上限として、子供の父親に出産休業を割り当てる権利がある。父親が当該女性従業員と婚姻関係にあるか否かは問わない。この割当分は、既存の法律により男性従業員に認められていた7日間の父親育児休暇に加算される形となる。子供の父親が死亡している、不在である、あるいは行為能力を制限されているという場合、代わりに子供を世話する人に前記給付を割り当てることができる。
  • 要件を満たした女性従業員には、105日間、平均給与月額に基づいた産休手当が支給される。これは、出産が帝王切開又は自然分娩のいずれによる場合でも変わらない。産休手当は、雇用主がまず支給し、その後SSSから雇用主に払い戻される。

民間企業の雇用主は、出産休業及び手当の給付を受ける女性従業員が、給与全額分を受け取るべきことに留意する必要があります。SSSから実際に受領する給付額と、女性従業員の出産休業全期間分の基本給との間に差がある場合、その差額分を支払う責任が雇用主にはあります。ただし、特定の事業については、法律によりこれが免除されています。

雇用主は、法律に規定されている産休手当の支給を回避しようと、雇用の際に女性が不利となるような差別をすることも禁じられています。

法律に違反した場合、刑事罰として、20,000ペソ以上200,000ペソ以下の罰金刑、及び/又は6年超12年以下の懲役刑が科されます。違反者が法人の場合には、そのマネージングパートナー、責任者、取締役又はパートナーが処罰の対象となります。さらに、法律違反は、違反した企業の営業許可証の更新を拒絶する理由ともなります。

今回の画期的な法律はまさに、女性が社会の中で重要かつ中心的な役割を果たしていることの証しです。


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

当事務所 フィリピン弁護士 Krizelle Marie F. Poblacion

フィリピン大学法学部次席卒業。2010年フィリピン司法試験6位合格。フィリピンのPoblador Bautista & Reyes法律事務所に勤務し、フィリピンにおける事業展開の様々な側面に関する助言及び支援を国内企業及び多国籍企業に提供。専門は、フィリピンの会社法及び商標法。2014年、配偶者の海外赴任に帯同して来日。同年11月に黒田法律事務所での勤務を開始以来、日本企業による対フィリピン投資事案を専門に扱う。