第11回 フィリピンにおける配車サービスアプリの規制

皆さん、こんにちは。Poblacionです。
今回は世界各国で広まりつつある配車サービスアプリに関するフィリピン国内での規制についてお話しします。

もし、ラッシュアワー時の首都マニラでタクシーを拾おうとしたら、おそらくその場に立ち尽くしたまま身動きが取れず、ストレスが溜まる一方となることでしょう。なぜなら、フィリピンでは交通量がピークとなるラッシュアワー時には、タクシーは往々にしてつかまらず、また所要時間も読めません。さらに、目的地によってはドライバーから乗車を断られることや、実際の走行距離による乗車料金をはるかに上回る金額を要求されることもあります。また、タクシードライバーによる強盗や強姦、さらには殺害事件が起こるという恐ろしい話も聞きます。このようなタクシー業界が抱えている問題の存在から、より安全で信頼性の高い他の公共輸送サービスを利用したいという乗客が増えています。そこに登場したのが、Uber、GrabTaxi、Easy Taxyといった、アプリベースの配車サービス企業です。

配車サービス企業は、国によっては輸送ネットワーク企業(TNC)として知られ、フィリピンでは今、その人気が増してきています。TNCの配車サービスアプリは、乗客とドライバーとを直接繋ぐプラットフォームの役割を果たします。現行の営業権で既にカバーされているタクシードライバーや、更にお金を稼ぎたいと考える一般民間人も、この配車サービスに登録することができます。乗客は、追加機能としてドライバーの氏名、電話番号及び車両番号を検索することもできます。衛星追跡機能を備えたTNCアプリもあり、乗客がこれを利用して友人や家族にルートや正確な位置を把握させることもできます。このような配車サービスアプリを利用した場合の料金は、一般的に通常のタクシー料金の2倍から3倍ですが、より安全で早く、信頼性も高い公共輸送手段を求める顧客に積極的に利用されています。

一方で、TNCの合法性については、すぐに議論がなされました。
営業権を持たない一般民間人による配車サービスへの登録を許可するTNCの手法は公共輸送に従事する企業に陸上交通許認可規制委員会(LTFRB)からの営業権又は営業許可の取得を要求しているフィリピン公共サービス法(共和国法第145号)の規定に違反する、と訴える複数の団体がいたのです。そこでLTFRBは2014年、営業権をもたずに配車サービスに登録している個人車両について調査を開始しました。その報告書によると、調査の結果、Uberのアプリを利用して顧客と連絡を取っていた個人車両のドライバーが見つかりました。そのドライバーの免許証は没収され、また車両は押収され、更に営業権をもたずに営業していたことに対して200,000ペソの罰金の支払が命ぜられました。

当然ながら、LTFRBの「Uber対応」には一般利用者から多くの批判が寄せられました。

TNCを規制する一方で、安全で効率性の高い公共輸送サービスを求める公衆の要望にも応える必要があることから、その均衡を保つため、運輸通信省(DOTC)は最近、省令第2015-11号を発行し、TNCの合法性について最終的に結論を下しました。この省令は、アプリベースの公共輸送サービスを世界で初めて国家の法的規制の枠組みに入れたものであると言われています。

この省令により、TNCが提供するものとして、「輸送ネットワーク車両サービス(TNVS)」という新たな区分の公共輸送サービスが制定されました。また、省令はTNCについて、「インターネットベースの技術アプリ又はデジタルプラットフォームの技術を利用して、乗客と個人車両を使用するドライバーとを、事前に手配された有料の公共輸送サービスを提供する…組織」と正式に定義しました。公衆に対するTNVSの提供が正当と認められるためには、TNC、運営者及びドライバーが下記の条件をすべて満たす必要があります。

  • 対象車両は、エアコン付きのセダン、アジア・ユーティリティ・ビークル(AUV)、スポーツ・ユーティリティ
  • ビークル(SUV)、バン又はこれらに類する車両であり、ドライバー以外の最大搭乗者数が7名以下であること
  • TNVSの料金は、LTFRBの監督下でTNCが設定すること
  • ドライバーは、TNCの認定を受け、業務用免許を保有し、LTFRBに登録していること
  • 車両は、TNCの認定を受け、適切なツールや設備を備え、製造日から7年以上経過していないこと
  • ドライバーは、事前に手配された輸送サービス中に、常にオンラインで動作する装置を所持していること
  • ドライバーは、常に、電話や予約サービスを通じてではなく、TNCが提供するオンライン動作アプリを通じて公共輸送サービスを事前に手配する乗客を乗車させること
  • ドライバーは、路上で乗客を拾うのを禁止されていること
  • ドライバーは、空港管理者の許可を受けていない限り、空港で乗客を乗車させるのを禁止されていること
  • ドライバーは、車両で移動中、LTFRBの定める身分証明カードを掲示すること
  • 乗客には、LTFRBが認定した保険会社による保険を付保すること
  • 運営者及びドライバーは、政府当局が発行する規則や規律を遵守すること

配車サービスアプリが「合法化」されたことで、信頼しているTNCがフィリピンでの運営を続けられるとわかった利用者達は、ほっと安堵の息をついたことでしょう。


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。