第16回 フィリピン経済特区に関するQ & A

皆さん、こんにちは。Poblacionです。今回は、フィリピンへ投資する外資企業に対して非常に多様で手厚い優遇制度を設けているとされるフィリピン経済特区庁(PEZA:Phillipine Economic Zone Authority)について探っていきましょう。

PEZAとは何か?

PEZAとは、経済特区を監督し、経済特区に関するポリシー全般を定める政府機関です。 また、PEZAは経済特区内に入居する企業の登録及び規制、並びに、かかる企業に認められる優遇措置の管理も担っています。

経済特区とは何か?

経済特区とは、農産業、工業、旅行業、レクリエーション業、商業、銀行業、投資事業及び金融業を中心として高度に開発された、あるいは開発される潜在性を備えた、選ばれた地域です。これらの地域は、特別な関税地域として運営管理されています。

2015年1月現在、フィリピン全土で317の経済特区が運営されています。そのうちの68が製造業経済特区、209がITパーク/ITセンター、19が農産業経済特区、19が旅行業経済特区、2が医療ツーリズム地区です。

PEZAの登録資格はどのようなものか?

原則として、誰でも、どの企業でも、その国籍や運転資金額にかかわらず、PEZAに自由貿易企業として登録することができます。

ただし、PEZA登録企業であっても、フィリピン法により資本及び持分上の制限が課されている取り扱いに慎重を要する特定の産業に関しては免除されません。例えば、企業が経済特区内で公益事業(例えば、電気又は水の供給)を行う場合、憲法の規定通り、フィリピン資本率が60%以上でなければなりません。

PEZAの登録及び優遇措置を受けられる事業内容とはどのようなものがあるか?

PEZAの登録及び優遇措置を受けることができるのは以下の事業内容です。
(1) 輸出製造業、(2) ITサービス輸出、(3) 観光業、(4) 医療ツーリズム業、(5) 農産業関連輸出製造業、(6) 農産業関連バイオ燃料製造業、(7) 物流及び倉庫サービス業、(8) 経済特区の開発及び運営、(9) 施設提供業、 (10) 公益事業

現在既にPEZAに登録している企業、例えば半導体製造業に従事している企業が、事業の拡大に伴い、オフショアITサービスの提供を考えている場合、改めてPEZAに登録する必要があるか?

PEZAに登録されるのは、プロジェクトやその事業内容であって、企業ではないため、登録が必要となります。従って、ある企業が既にPEZAに登録されているからと言って、経済特区でどのような種類の事業も自由に行うことができ、当該事業に関する優遇措置を受けられる、というものではありません。登録された事業内容と異なる事業を行う計画がある場合、新たな事業についてもPEZAに登録する必要があります。

PEZAへの登録に必要な書類は何か?

一般的な必要書類は以下の通りです。(ただし、具体的には行う事業内容によって異なる場合もあります)

  1. 認証付申請書及び反汚職証明書(PEZAのウェブサイトから書式をダウンロードできます。リンク先は こちら
  2. 証券取引所登録証、通常定款及び付属定款のコピー
  3. 申請の承認、並びに、PEZAとの取引権限を与えられる代表者の指名に関する取締役会決議
  4. 主要役員の履歴書
  5. 賃借予定の建物/区分に関する予約票(該当する場合)
  6. 経済特区開発者/運営者及びPEZA特区監督者/管理者の推薦状
  7. 親会社の会社概要(該当する場合)
申請から登録までの手続期間はどのぐらいか?

PEZAが要求する資料及び情報が全て整っている場合、通常21営業日以内に処理されます。

PEZA登録企業になるための申請料は?

申請料は3,600ペソで、登録料は6,000ペソです。

経済特区内の土地や建物を借りることは可能か?

フィリピン憲法により、フィリピン国籍を有する者又はフィリピン資本が60%以上の企業以外には、フィリピンの土地の所有権は認められていません。従って、PEZA登録企業が経済特区の土地を購入するには、上記要件を満たしている必要があります。

土地の所有権に関しては制限がありますが、PEZA登録企業は、PEZAが課す条件に従った上で、経済特区内の建物やその他構造物の建設、購入又は売却を行うことができます。PEZA登録企業は、経済特区内の土地や建物に関する長期賃貸借契約を締結することも認められています。賃貸借契約は最長50年まで認められ、その後25年を超えない範囲で一度に限り更新も可能です。

PEZA登録企業に与えられる財務上の優遇措置とは?

一般的に、全てのPEZA登録企業には下記の優遇措置が与えられています。

  • パイオニアプロジェクト(従来にない新しいプロジェクト)の場合は6年間、それ以外のプロジェクトの場合は4年間の免税期間が与えられます。また、一定の条件に基づき免税期間が延長される場合もあります。
  • 法人税の免税期間が終了後、経済特区企業には、登録された活動から得られた総所得に対し5%という特別税率が適用され、この税金は全ての国税及び地方税に代わるものとして取り扱われます。これにより、PEZA登録企業は、通常30%の法人税、12%の付加価値税、物品税等が免除されます。
  • 付加価値税率が0%となり、企業は付加価値税を免除されるだけではなく、現地購入に対して支払った仕入付加価値税についても還付請求することができます。
  • 原材料、資本財及び予備部品の課税が免除されます。
  • 埠頭使用料、輸出に関する税金、関税及び手数料が免除されます。
PEZA登録企業に適用される5%の特別税率に関し、「総所得」とは何を指すか?

「総所得」は以下の通り算出されます。

総所得 = 経済特区内における事業活動からの総売上高又は収益 − 販売割引、返金及び
引当金 − 管理費又は雑費控除前の直接経費

企業の総所得から控除できる直接経費には何が含まれるか?

経済特区輸出企業、自由貿易企業及び国内市場企業は、総所得から下記の経費を控除することができます。

  1. 直接的な給与、賃金又は人件費
  2. 製造監督者の給与
  3. 製品の製造に使用される原材料費
  4. 中間財
  5. 完成品
  6. 製造に使用される供給品及び燃料
  7. 企業が所有又は建設する機械、製造設備及び建物の減価償却費
  8. 賃料及び公共料金
  9. 固定資産に関連する金融手数料
PEZA登録企業に与えられる財務面以外の優遇措置は何があるか?

財務面以外での優遇措置は下記の通りです。

  1. 監督、技術職又は顧問として外国籍者の雇用
  2. 外国籍者の場合、数次入国の特権が付いた特別な一時渡航者ビザの発給、並びに、ビザ申請手続の迅速化
  3. 輸出入手続の簡素化
  4. 事業関連許可(建物占有許可、輸出入許可、ビザ等)のワンストップサービスの提供

経済特区では、PEZAにより週7日24時間のサービスが提供されており、PEZA長官やその他のPEZA役人も、緊急時には週7日24時間対応できる態勢を取っています。PEZAはこの体制に対し、「PEZAではお役所仕事的な対応はない。あるのは丁重な取り扱いだけである。」と誇らしげに唱えています。


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

当事務所 フィリピン弁護士 Krizelle Marie F. Poblacion

フィリピン大学法学部次席卒業。2010年フィリピン司法試験6位合格。フィリピンのPoblador Bautista & Reyes法律事務所に勤務し、フィリピンにおける事業展開の様々な側面に関する助言及び支援を国内企業及び多国籍企業に提供。専門は、フィリピンの会社法及び商標法。2014年、配偶者の海外赴任に帯同して来日。同年11月に黒田法律事務所での勤務を開始以来、日本企業による対フィリピン投資事案を専門に扱う。