第27回 台湾の姓について(2) 子の姓を抽選で決定?!

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

少し前ですが、夜の10時頃、台北市内を歩いていたら、待合室にたくさんの人が待っている病院がありました。そこは、中医の病院でしたが、台湾では病院は何時まで開いているのか興味を持ったので、衛生福利部に確認してもらったところ、病院や診療所の開業時間について特に法律の定めはなく、各自の裁量で営業時間を決めるとのことでした。聞くところによると、台北で結構有名な皮膚科の診療所などは、深夜の1時や2時まで営業しているそうです。ちょっとびっくりですが、患者にとっては便利ですよね〜。

今回は前回からの引き続きで姓、つまり日本でいうところの名字に関する台湾のユニークな法規について紹介いたします。
前回の本コラムにて、台湾では、夫婦が結婚しても、日本とは異なり、結婚前の姓を維持することが原則であるとことを紹介いたしました。
このように、夫婦別姓が原則であるとすると、子供の姓は、どのような方法で決められるのでしょうか。

台湾の以前の民法の下では、原則的に父方の姓が子の姓となっていました(入り婿の場合は逆)が、これが男女平等ではないとして民法が改正され、子の出生届を出す際に、父母の姓のいずれかを子の姓として両親が合意し、両親の署名した書面を役所に提出することで子の姓が決定されることになりました。

もちろん、両親が合意に至らない場合もあります。こんな場合はどうするのでしょうか。以前の民法には明文規定がなかったため、しばしば紛争が生じていましたが、この点も比較的最近、法律で手当てされ、申立人により役所で抽選という方法で決めることになりました。両親の間に何らかの事情があるのでしょうが、抽選で子供の姓を決めるんですよ!!なかなか、ユニークな決め方ですよね〜。

実際に抽選で子の姓が決定されるケースですが、内政部の登記資料によれば、300人から400人程度ありました。抽選がどのように行われるか気になったので、同僚に調べてもらったのですが、役所によって違いがあるものの、紙や卓球のボールに「父姓」「母姓」と記載して箱などに入れ、そこから夫や妻、祖父母などの申請人が引いて結論を出すようです。

しかし、申請人に該当する全ての者がくじを引けるので、申請人の間で結論が出せないこともあるようです。その場合は役所の主任がくじを引くことになるそうです。

また、なぜかくじ引きの回数が制限されていないとのことで、出生届の提出期限(戸籍法に定めあり:出生後60日以内)以内に何度でも引き直せるようです。この辺りは、くじ引きという制度にするのであれば、夫側と妻側の代表者一人ずつがくじを引き、いずれもが同じ姓を引くまで繰り返しくじを引いて子の姓を決定し、その後はくじ引きをしないなどというルールにすれば、余計な問題は起きないのではないかと思うのですが、どうして明確に決めないのでしょうね。

このように、くじ引きで決定されたりもする台湾の姓ですが、台湾の民法上、姓を変更できる機会も設けられています。具体的には、子供が成人する前に、一度だけですが、両親の合意で子供の姓を変更することができます。さらに、子の意思を最大限に尊重するために、子が成人した後、一回だけ、子自らが父の姓か母の姓か選択して変更するもできるようになっています。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。