第42回 「血汗企業」について〜その1

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

少し前になりますが、マッサージのお店に入りました。私は足つぼマッサージも好きなんですが、その日は「全身按摩」を選びました。そのお店で「全身按摩」をしてもらうのは初めてだったのですが、私の首、肩、背中やらがあまりよい状態ではないとマッサージ師さんが判断されたようで、かなり強烈な力でそれらの部位を「按摩」してもらっちゃいました。よほど血液か何かの流れが悪かったのでしょうか。。。

気持ちよい?痛すぎる?時間が過ぎて肩や背中を見ると赤黒く変色していてびっくり!!その日は首や肩がスッキリした感覚もありつつ、一方で体の表面が痛むという変な状態でしたね。「翌日以降に、もみ返しとかなければいいが」と思いましたが、大丈夫でした。リラックスタイムというよりは、体の不調な部分に対して施術を受けているような時間でしたね〜。

さて、本日は、次回と2回に分けて「血汗企業」について書いてみます。

「血汗企業」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?私は知りませんでした。電子辞書などで「血汗」という言葉を見ると、「血と汗。転じて努力」というような記載しかなく、古くからある中国語ではないと思われます。

そこで、「血汗企業」がどのような会社であるかと言いますと、実は、「日本でいう「ブラック企業」のような存在を指して使われているんですね〜。あるいは、まだ新しい言葉で、台湾全土で定着している言葉ではないかもしれません。

「ブラック企業」という言葉も、日本では、ここ数年で定着してきた新語だと思います。飲食業界などで若くして店長などにならされた人(よく、「名ばかり店長」と言われたりしますね)が尋常でない長時間勤務を強いられるような会社や、適切に残業代が支払われないなどの会社を指して使われています。
台湾でも労働者は労働基準法で守られているのですが、労働基準法に違反しつつ労働者を使用している会社が少なくないのが実態のようです。

このような労働基準法違反を行った会社に対する政府の対応で、台湾が日本と大きく異なる点として、台湾では、違反を行った事業単位の実名及び違反内容の公表が速やかに行われる点が挙げられます。台湾の労働基準法では、同法違反の一定の場合に、当該違反を行った事業者組織などの名前を公表することができるとされており、実際に、労働部のホームページで多くの実例を確認することが可能です。

これに対し、日本では、労働基準法上の罰則規定に、「公表」についての定めはなく、実務上は、行政指導が行われ、改善を待つというのが基本のようで、私が確認した東京労働局のホームページには、送検事例は掲載されているものの、会社名までは記載されていませんでした。

日本でも、最近、ブラック企業の問題が注目されたからか、昨年12月に厚生労働省が行ったプレスリリースにおいて、法違反を行っている企業に是正を促した後、なお改善が見られない企業については送検も視野に入れて対応するとされており、送検した場合には企業名等を公表すると発表しました。私が調べた範囲では、まだ具体的な公表事例はありませんので、一定の歯止めになっているのかもしれません。

日本と台湾で、法違反を行った企業に対する対応の差がはっきりと分かれていて、興味深いですね〜。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。