第88回 市政府は市民の味方??

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

突然ですが、かき氷食べてますか?暑い日に、いただくかき氷は最高ですよね〜。最近、私はうまい黒糖かき氷屋さんを近所(といっても10分位歩いたとこですが)に発見し、妻とちょくちょく行ってます。緑豆やパイナップルなど4つのトッピング付で確か50元というお値段です。その店の壁には一面、来店者の落書きがされており、お世辞にも小奇麗な雰囲気ではないですが、地元に根付いた昔からある「老店」という感じです。

私が日本にいるときには、かき氷のシロップは、いちご、メロン、レモン、ブルーハワイ、抹茶などがよくあるパターンで、黒糖のかき氷にめぐり合うことはなかったのですが、台湾で黒糖かき氷に出会い、すっかり大ファンになってます。まだ食べられていない方は、ぜひご賞味ください。マンゴーかき氷もよいですが、黒糖カキ氷にも捨て難い魅力がありますので。

最近、それほどニュースで大々的に報じられるわけではなくなりましたが、八仙楽園の事故で亡くなられる方が、少しずつ増えています(7月28日の時点で確か9名)。生命維持がやっとで回復の見込みが少ない状態になってしまったときに、家族が本人の苦しみを思って、延命を拒否しているんでしょうね。家族の方にとっても、非常に辛い決断だと思います。

その八仙楽園に関連するニュースで、私が少し「オヤッ」と思ったニュースがありました。士林地方法院に対して、八仙楽園等の3つの会社の資産、合計1億6900万元の仮差押を申請し、同法院が早々に認めたというもので、この部分自体は特に驚きでもなんでもありません。驚いたのは、この申請を行ったのが、新北市政府が委託した弁護士団だったんですね〜。つまり、八仙楽園の爆発事故で直接の被害を受けているわけではない新北市が、被害者に代わって、弁護士を探しているようなのです。

他にもそのニュースを見ると、新北市政府は一部の被害者に代わって、申請に必要な担保についても、暫定的ではあるようですが、「市政府の保証書」をもって代用し、裁判所もそれを認めていました。日本においては、このような民間の施設で起こった事故の損害賠償を確実に行うため(事故を起こし、賠償責任を負うべき会社が財産隠しを進める可能性あり)とはいえ、市政府が事故の被害者に代わり、弁護士を探したり、担保を提供するなんてことは聞いたことがないですね〜。

しかし、台湾においては、被害者のために市政府が仮差押に協力するということは重大な事故や事件などの際には時々あることのようです。今回の八仙楽園のケース以外にも、少し前の廃油加工事件や高雄のパイプラインで起きた爆発事故などにおいても同様の状況があったと聞きました。被害者にとっては、確かに非常にありがたい話ですよね〜。事故などの被害に遭った人を社会全体で支えるという方向性、意識は誰もが認めるところで、日本でも、特別措置法(例えば東日本大震災関係のものなど)というような立法で手当てすることはありますが、台湾の市政府などが行う仮差押申請への協力にはびっくりしました。

実際に、いつどこでどんな事故や事件が起きるかわかりませんので、運が悪ければ誰もが被害者になる可能性があります。そこで、市政府などの行政権力が主体的、機動的に被害者に協力するという姿勢は素晴らしいと感じました。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。