第89回 董事の解任

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。

最近、太り気味でちょっと自分としては望まない体重になってしまっているのを憂い、少しでもカロリーを消費しようと週末にジョギングをしました。台湾大学の近くを走っていると、昆虫を研究している学科の建物を見つけました。その建物では、小規模ながら昆虫標本を展示しているのを発見しましたよ。建物の古めかしい感じと合わせて、私は気に入りましたが、少し不便な場所にあるので、実際に展示を見に訪れている人は少ない気がしましたね~。その辺りは、台北市内中心部からそれほど離れていない場所ですが、山裾ということもあり、街はずれといえば街はずれのエリアなんですね。

大学関係の建物がいくつかあり、他にも畜産関係の学科が動物を実際に飼っている場所もあり、牧場などでにおう、あのかぐわしい香りを久しぶりに味わいました(笑)。帰り際に台湾大学の中で食べた屏東産のアイスクリームが美味しかったなぁ。せっかく走ってるのにアイスなんて食べてたら、ダイエットになってないですよね。ははは。

本日は董事の解任についてとりあげてみたいと思います。
台湾の会社において、法令や定款などで株主総会決議によるとされている事項を除き、原則として業務執行は董事会の決議をもって行う必要があり、その意味で董事の役割は会社にとって非常に重要といえます。

このような役割を担う董事を解任するためには、株式総会において、発行済株式総数の3分の2以上を有する株主が出席した上で、出席株主の議決権の過半数の同意を得て解任決議をすることが必要になります。合弁会社(出資者が2者以上いる会社)においては、上記決議をすることが難しい場合もあるでしょうが、1者のみが100%出資している会社の場合、上記決議自体は出資者の一存で行うことができますので、言ってみれば、董事を解任しようと思えば、いつでも対象の董事を解任できるといえます。

もっとも、董事を解任するにあたり、注意すべき点がないわけではありません。会社法において明文で規定されているのですが、「任期中に正当な理由なく
解任する場合、董事は会社に対し、これにより受ける損害を賠償するよう請求することができる。」とされており、会社が勝手な都合で、任期中に董事を解任した場合、損害賠償責任を会社として負わねばららないという事態が生じてしまう可能性があります。

他にも、董事として選任されているものの、数合わせで董事とされているだけの名目董事で、実際には雇用関係にある労働者と同様の仕事しかしておらず、退職金の積み立ても行っているというような場合に、董事だからといって会社の一存で退職させるような場合には、後ほど、争われると裁判所により、対象者の実態は、労働基準法の適用を受ける労働者であり、同法所定の解雇事由がない限り、会社側から一方的に退職に追い込むことは違法であると判断されるという可能性も否定できません。よって、名目董事について退職してもらう場合に、解雇事由がなければ、対象者の同意を得て、退職手続きを進めるようにした方が無難ですね。

実際にも、董事職ではあるものの、名目的に董事になってもらっているだけという人がいるという話は時々聞きますので、参考にしていただければと思います。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。