第114回 出産休暇について

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。

春節(旧正月)が近づいてきましたね~。私が働く事務所が入っているビルでも、エレベーターのところに「五福臨門」や「招財進寶」という縁起のよい言葉の「対聯」が貼られ、ロビーに縁起物の「銀柳」が置かれるなどしており、春節ムードの高まりを感じます。今年の春節期間中、私は日本に帰省しますが、出会う方に聞いていると、逆に親に台湾に来てもらう人、台湾に残ってゴルフざんまいの人、日本以外の場所に旅行で行く人などさまざまです。中には5年連続でモルディブですといううらやましい方もおられました。皆さまが楽しい春節休暇を過ごされることを願っております。

「台湾の女性は出産後、早々に職場復帰し働く」という話を時々耳にします。そこで、「台湾の出産休暇ってどうなっているのかなぁ」と思い、本日のコラムで取り上げることにいたしました。

台湾8週間、日本は14週間

台湾の出産休暇に関する規定は労働基準法にあり、「出産前後の女性労働者については、就業を停止させ、かつ8週間の出産休暇を与えなければならない」とされています。ちなみに、日本の出産休暇に関する規定も労働基準法にあり、「使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えない」とされています。

単純に比較しても、日本の出産休暇は産前産後合わせると14週間(多胎妊娠の場合はなんと22週間!!)となりますので、台湾の方が全然短いですよね~。法定の8週間という出産休暇の期間も、台湾では日本のように出産前、出産後の区別がなされていませんので、多くの場合、出産ぎりぎりまで勤務を続けられているものと推測いたします。

出産前と同様の待遇享受

出産休暇中の女性の賃金ですが、日本では法律に明確に規定されておらず、会社に負担義務があるわけではありません。ネットなどで見る限り、会社によっては産休中・育休中に給料の何割かを出すところもあるようですが、少数派にすぎないと思います(出産手当金は別途支給されることが多いようです)。

この点、台湾は労働基準法で明確に「前項の女性労働者(出産休暇中の女性労働者を指します)の勤務期間が6カ月以上の場合、就業停止期間中の賃金を通常通り支給し、勤務期間が6カ月未満の場合、半額を支給する」とされており、多くの女性は出産休暇中も出産前と同様の待遇を享受できるようで、日本より台湾の女性の方が恵まれているといえそうです。

以上の内容を踏まえて考えると、「台湾の女性は出産後、早々に職場復帰し働く」というのは、出産ぎりぎりまで働き、合計8週間の法定出産休暇の後、育児休暇を取得せずに職場復帰し働くという女性が台湾に比較的多くおられるということなのかもしれません。保育園に子どもを預けたり、「じいじ」や「ばあば」に子育てを手伝ってもらいつつ、仕事に打ち込むパワフルな台湾女性が多いということなんでしょうね~。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。