第125回 台湾の行政機関~その1

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。

ついつい避けてきた歯医者に通い始めました。日本にいた頃、つまり、5年以上前には定期的に診てもらっていたのですが、その後、移り住んだ広州、台北では、きちんと治療してもらえないのではないかという思い込みもあって通っていなかったのです。久しぶりに行った歯医者ではこってり絞られました。「歯周病は虫歯より怖く、進行すると歯が溶けて根元がぐらぐらになって抜歯せざるを得なくなり、最終的には入れ歯にしなければならなくなります。数年後に入れ歯生活になりたくなければ、毎日、歯間ブラシを使って予防してください」というのが要旨ですかね。確かに、日本にいた頃、歯間ブラシを勧められ、使っていたことがありましたが、最近はすっかりご無沙汰でした。反省しております。皆さんの中にも、私と同様の状況の方もおられるかもしれません。台湾だからと歯医者を敬遠せず、定期的に診察してもらったほうがよいと思いますよ~。

行政機関の構造の違い

台湾で仕事をしていると、労働部や衛生福利部などという名前を聞くことがあると思いますが、これらは日本の厚生労働省に当たる行政機関なんですね。そういえば、台湾の行政機関についてまだ取り上げていなかったなぁと思い立ちましたので、今回と来週、2回に分けて紹介することに致します。

台湾にも当然、多くの行政機関が存在し、最高機関は行政院であることが憲法に明文で規定されています。行政院は日本でいうところの内閣に当たるとご理解いただければよいです。ただし、日本と台湾は行政権を担う主体の構造が異なり、日本の行政権は内閣の首長(トップ)である内閣総理大臣を中心に行使されているのに対し、台湾の行政の名目上のトップである行政院長は、実は真の権力者ではなく、行政権は総統を中心に行使されます。

名目上のトップと言ったのは、行政院長の選出過程からも明らかです。行政院長は総統の指名により就任するため、総統には頭が上がりません。過去を振り返れば、総統の支持率が低下すると、支持率回復を狙って行政院長を交代させることがよくあったそうです。どれほどの効果があるのか私には分かりませんが、行政院長を交代させることはイメージ刷新に活路を見出すという意味で、日本の内閣改造のようなものといえるかもしれませんね(間違った理解だと怒られちゃうかもしれませんが…)。

部長は行政院長の推薦で

日本の国務大臣に相当するところの労働部や衛生福利部などの部長は行政院院長が推薦し、総統が任命すると台湾の憲法で規定されています。

もっとも、日本の国務大臣のように、「その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない」というような規定はなく、そもそも立法委員が行政を担う組織の長になるわけではないんです。仮に台湾の立法委員が、労働部などの部長になるためには辞職しなければならないとのことで、この点では日本と大きな違いがあるといえますね。

来週は、台湾の行政組織の構成について、具体的にはどのような「部」があるのか、日本の「省」と比較しつつ紹介したいと思います。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。