第19回 令和元年会社法の改正について

令和元年に会社法が改正され、①取締役等に対するインセンティブの付与、②社外取締役の活用、③株式会社資料の電子提供制度、④濫用的株主提案に対する対応などが定められています。

この改正は、株主総会資料の電子提供制度等を除き、令和3年3月1日に施行されることになりました。改正法の概要は以下のとおりですが、ここでは改正法のうち、施行日までに取締役会で必要な決議等をすることが必要となる取締役の規律に関して簡単にご説明します。

1.令和元年改正会社法の概要

  取締役等に関する規律の見直し
  ・取締役等への適切なインセンティブの付与
  ・取締役の報酬等に関する規律
  ・補償契約、役員等賠償責任保険契約(D&O保険契約)に関する規律

  社外取締役の活用等
  ・業務執行の社外取締役への委託
  ・社外取締役を置くことの義務づけ

    株主総会に関する規律の見直し
  ・株主総会資料の電子提供制度(2022年度中施行予定)
  ・株主提案権の制限
  ・議決権行使書面の閲覧拒絶事由
  ・事業報告、参考書類の記載事項の拡充

 

2.取締役の報酬等に関する規律

取締役の報酬には、取締役に対してインセンティブを付与する重要な機能があると考えられていることから、取締役の報酬について、「取締役の報酬等の内容を適切な内容とするための仕組み」を整備し、取締役の報酬等の内容の決定手続等に関する透明性の向上をはかることとされました。

監査役会設置会社(公開大会社且つ有価証券報告書提出会社)または監査等委員会設置会社は、取締役会において、施行規則に定める取締役(監査等委員を除く)の個人別の報酬等の決定方針を定める必要があります(改正会社法第361条第7項)。

「報酬等の決定方針」として定めるべき事項は次のとおりです(改正会社法施行規則第98条の5)。

① 個人別の報酬等のうち、次の事項の決定に関する方針
(ア) 業績連動報酬等について業績指標の内容・額または算定方法
(イ) 非金銭報酬等(株式報酬・ストックオプション)の内容・額(数)または算定方法
(ウ) その他の報酬((ア)(イ)以外の報酬)の額または算定方法
(エ) (ア)(イ)(ウ)の割合(構成比率)の決定に関する方針
② 報酬等を与える時期・条件の決定に関する方針
③ 報酬等の内容の決定を取締役その他の第三者に委任する場合の決定方法
④ その他個人別報酬等の内容の決定に関する重要な事項

 

3.補償契約に関する規律

会社補償とは、役員等にその職務の執行に関して発生した費用や損失の一部を会社が事前または事後に負担することをいいます。改正前会社法では、会社補償に関する規定はありませんでしたが、会社が役員に費用等を補償することに関する範囲・手続等を明確にして会社補償が適切に運用されるように、補償契約に関する規律が定められました。

補償契約の制度を導入する場合、契約の内容を検討し、取締役会規則等で、付議事項として追加することが必要となります。

また、会社が役員等との間で補償契約を締結した場合、役員等選任議案の株主総会参考書類にその補償契約の内容の概要を記載し、且つ、事業報告に①当該役員等の氏名、②当該補償契約の内容の概要などを開示する必要があります。

 

4.役員等賠償責任保険契約(D&O保険契約)に関する規律

D&O保険は、すでに広く普及しているものの、会社法上、D&O保険契約について規定がなかったことから、会社がD&O契約を締結するための手続等を明確にしてD&O保険契約が適切に運用されるように必要な規律が定められました。
D&O保険契約に加入する場合、D&O保険契約の内容を検討し、取締役会規則等で、付議事項として追加することが必要となります。

また、会社がD&O保険契約に加入した場合、役員等選任議案の株主総会参考書類にそのD&O保険契約の内容の概要を記載し、且つ、事業報告に①当該役員等の氏名、②当該補償契約の内容の概要などを開示する必要があります。


*本記事は、法律に関連する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者

パートナー弁護士 飯田 直樹