台風休暇を巡る給与の取り扱い等
7月初旬、台風4号(ダナス)が台湾に上陸しました。数日にわたって広範囲で台風休暇(中国語:颱風假)が発令されたたものの、死者2名、負傷者334名という甚大な被害をもたらしました。今回は、台風休暇が発令された場合における給与の取り扱い等についてご紹介いたします。
1. 台風休暇の発令基準及びその意義
台風休暇の発令基準は、「自然災害による出勤及び登校停止にかかる作業弁法」(中国語:天然災害停止上班及上課作業辦法)に規定されています。
台風休暇は、「休暇」との名称がついているものの、所轄官庁である労働部(日本の厚生労働省に相当)は、「労働者の安全を第一に考えるように」との見解を出しているに過ぎず、実際に出勤等を停止させるか否かの最終的な判断は、雇用主に委ねられています。
もっとも、従業員が、雇用主の求めに応じて台風休暇発令中に出勤した場合であって、当該従業員が通勤中に負傷等した場合には、雇用主は労働基準法59条に基づき、労働者に対して業務災害補償を支払わなければならなりません。
2. 台風休暇時における給与等の取り扱い
他方で、台風休暇時における給与の取り扱い等については、「自然災害発生時における事業所労働者の出勤管理及び賃金支払いに関する要点」(中国語:天然災害發生事業單位勞工出勤管理及工資給付要點)に規定されています。
同要点第7条は以下のとおり雇用主に対し、努力義務を規定しています。
「労働者が前条に定める状況(*台風休暇の発令により、労働者が出勤しなかった場合等)により出勤できなかった場合、使用者は賃金を控除しないことが望ましい。ただし、使用者の要請に応じて労働者が出勤した場合は、当日の賃金を支給するだけでなく、労働者に対し追加の賃金を支給し、交通手段、交通手当、またはその他必要な支援を提供することが望ましい。」
このとおり、賃金の非控除や割増賃金支給等はあくまで努力義務に過ぎないことから、上記1でご紹介した出勤等の停止の判断同様、台風休暇時の給与支払い方針についても、雇用主の判断に委ねられていることとなります。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。
【執筆担当弁護士】