就業サービス法一部改正案が可決

今年4月、「就業サービス法一部条文改正草案」(中国語:就業服務法部分條文修正草案)が行政院(日本の「内閣」に相当)で審議・可決されました。今回の改正は、在台企業による国際競争力の向上を支援し、サプライチェーンにおける強制労働リスクを防止するとともに、国際労働機関(ILO)が採用するイニシアティブ及び強制労働のILO指標(ILO Indicators of Forced Labour)等の国際基準に合わせることを目的として行われたものです。改正条文は今後、立法院(日本の「国会」に相当)での可決を経たうえで、総統による公布をもって施行される見込みです。

1.改正の概要

今回の改正草案の主な内容は以下のとおりです。

(1)「証明書類の保管(中国語:留置)の禁止」(第5条2項2号)
 従前は、募集又は雇用時における、求職者または従業員の意思に反した国民身分証等の証明書類の保管、または就業上必要のない個人情報の提供を要求することが禁止されていました。しかしながら今回の改正により、求職者または従業員の意思にかかわらず、身分証明書類、就労証明書その他の証明書類を保管し、または就業上必要のない個人情報の提供を要求することが禁止されました。

(2)「民間職業紹介事業者の禁止行為」(第40条1項3号4号)

上記⑴の内容に加え、求職者または労働者の財物の①着服、②差押え、または③保証金を徴収することが明確に禁止されました。

(3)「外国人労働者に対する雇用管理義務・禁止行為」(第57条8号9号)
 従前は、単に「雇用する外国人の旅券、居留証明書類または財物を不法に差し押さえ、または着服すること」を禁止しているに過ぎませんでした。しかしながら今回の改正により、①雇用する外国人の身分証明書類、就労証明書その他の証明書類を保管すること及び、②雇用外国人の財物の❶着服、❷差押え、または❸保証金を徴収することが明確に禁止されることとなりました。

 

2.罰則規定の新設

上記1の改正内容に伴い、第54条、第67条及び第72条に罰則規定が新設される見込みです。具体的には、以下のとおりです。

(1)雇用主が、求職者又は労働者の身分証明書等の書類を保管した場合

この場合、雇用主に対し、過料6万~30万台湾ドル、既存の外国人雇用許可の取消し及び新規申請案件に対する規制措置がなされます。

(2)民間職業紹介事業者が、求職者、労働者又は雇用主の身分証明書類を保管した場合
この場合、民間職業紹介事業者に対し、過料6万~30万台湾ドル、4回以上違反した場合には営業停止処分となります(他の違法事由と合算し、1年以内に4回以上罰金処分を受けた場合についても同様です)。

(3)雇用主及び民間職業紹介事業者が、求職者又は労働者の財物を横領し、若しくは保証金を徴収した場合
この場合、①雇用主に対し、過料6万~30万台湾ドル、既存の外国人雇用許可の取消し及び新規申請案件に対する規制措置がなされるとともに、②民間職業紹介事業者に対しては、過料6万~30万台湾ドル及び、営業停止処分が下されます。

実際に改正法が施行されるまでには、まだ期間がありますので、労働契約書や就業規則の内容を含め、社内運用が法令に適合しているかを見直す良い機会ともいえます。円滑な事業運営のためにも、法令改正による手続面での支障が生じることのないよう、必要に応じて専門家の助言を受けながら進めることをお勧めいたします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修 弁護士 秋口麻貴