第630回 期限切れ食材をめぐる刑事責任
台湾では日系の飲食店が数多く進出していますが、食材の管理を誤れば、行政処分にとどまらず、刑事責任を問われることもあります。
今回は、期限切れ食材の提供が詐欺罪などに問われた地方裁判所の裁判例を紹介し、留意すべき点を説明します。
期限切れ和牛で「詐欺」に
事案は、ある日系の高級焼肉店が、賞味期限を数カ月過ぎたブランド和牛を看板料理として調理し、それと知らない多数の客に高い価格で提供していたというものです。通報を受けた市の食品衛生当局が立入検査を行い、店内から大量の期限切れ和牛が見つかりました。これに対し店側は、当初は提供の事実を否定し、報道機関に法的措置を示唆するなど強硬な姿勢を示していました。
被告が期限切れを認識
判決の分かれ目となったのは、店側が賞味期限切れを「認識」していた点です。過失にとどまるなら行政処分の問題ですが、期限切れと知りながら看板料理として通常の価格で提供すれば、客を欺いて代金を交付させる詐欺に当たります。これにより食品衛生法違反にとどまらず、加重詐欺罪の成立が認められました。
実刑と国外退去の法的根拠
法的根拠は複数あり、1つ目は3人以上が共同で人を欺く「加重詐欺罪」です。3名が役割を分担しており、通常の詐欺より重く処罰されました。もう1つは、期限切れ食品の販売を禁じる食品衛生関連法です。被告らは審理の途中で起訴事実を認め、被害客との和解や不正利益の返還を申し出て執行猶予を求めました。しかし裁判所は、3名にそれぞれ2年から2年8月の実刑を言い渡し、いずれも刑の執行後に国外退去を命じ、運営会社にも罰金100万台湾元を科しました。
日系飲食店の進出が続くなか、在台日本人が留意すべき点は、食材管理の不備が「行政処分」では済まないこと、期限切れと知りつつ提供すれば「詐欺罪」として実刑もあり得ること、外国籍の経営者は執行後に国外退去を命じられ得ることです。賞味期限の管理を徹底し在庫を適切に廃棄する日々の対応が、深刻な刑事責任と事業リスクの回避につながります。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。
