第96回 2027年1月1日施行!中国の新「商標法」における主要な8つの改正点

中国の「商標法」が2027年1月1日から正式に施行されます。これは長年の時を経て行われる全面的な改正となります。今回の改正は、商標の登録、権利確定、ブランド保護、不使用商標の整理、悪意の冒認出願等の実務上の課題に対して大量の規則の見直しを行っており、中国へ進出し事業を展開する企業に多大な影響を与えます。以下は、正式な法律条文の原文を踏まえ、主要な変更の要点並びに実務における注意点を整理したものです。

1.登録可能な標章の拡大:動的標章の追加(第14条)

【新法条文原文】

自然人、法人又は非法人組織の商品を他人の商品と区別することができるいかなる標章(文字、図形、アルファベット、数字、三次元標章、色彩の組合せ、音声、動的標章等、及びこれら要素の組合せを含む)も、すべて商標として登録出願することができる。

改正の解説:

新法は商標登録の客体を拡張し、ショートビデオ、ライブ配信、映画・テレビ等のデジタル経済の業態に適合できるよう、従来の文字商標、図形商標、三次元商標、音声商標のほかに、動的標章を登録可能な範疇に正式に組み入れました。もっとも、動的標章も同様に識別性等の法定要件を満たす必要があることに注意が必要です。

 

2.著名商標保護の強化:未登録の著名商標も区分を越えた保護の対象に(第21条第2項)

【新法条文原文】

非同一又は非類似の商品について登録出願された商標が、他人の著名商標の複製、模倣又は翻訳であり、公衆を誤認させることにより、当該著名商標の所有者の利益が損なわれるおそれがある場合、登録を認めないものとし、かつ使用を禁止する。

改正の解説:

現行法の下では、すでに登録されている著名商標のみが区分を越えた保護の対象となり、未登録の著名商標は、同一又は類似の商品の範囲内においてのみ権利保護が可能となっています。新法は、区分を越えた保護における登録という前提条件を撤廃し、保護を未登録の著名商標にまで拡大しました。ブランドが中国国内において著名な程度に達している場合、個別事案で著名であることが確認され、かつ公衆を誤認させることにより、利益が損なわれるとの要件を満たす前提においては、たとえ商標が中国で登録されていなくても、他人が非類似商品において当該商標を複製、模倣、翻訳することを阻止することができます。

実務における注意点:新法は、著名商標の所有者にとって有利な内容となっており、冒認出願を防ぐために盲目的に高額なコストを投じて全区分での商標登録を実施する必要がなくなります。もっとも、当該保護は個別事案における受動的な救済であり、著名商標は個別の事案ごとに必要に応じて認定されるとの原則があるため、権利確定という商標登録の基礎的な役割を代替することはできません。企業としては、権利保護の際に著名商標の保護を主張する必要が生じた場合に備え、依然としてブランドの知名度、販売、宣伝等の証拠を継続的に保存しておく必要があります。

 

3.商標異議申立期間を3か月から2か月に短縮(第36条)

【新法条文原文】

初歩査定公告がなされた商標について、公告の日から2か月以内に、先行権利者、利害関係人が本法第20条乃至第22条、第23条第1項、第24条の規定に違反していると認める場合、又は何人も本法第15条、第16条第1項、第17条乃至第19条、第25条の規定に違反していると認める場合、国務院商標管理部門に異議を申し立てることができる。公告期間満了時に異議がない場合、登録を認め、商標登録証を交付し、かつ公告する。

改正の解説:

異議申立期間は現行法の3か月から2か月に短縮されます。一方では、悪意の異議申立てを利用して商標登録を遅延させる行為を抑制し、適法な出願人がより早く商標権を取得できるようになりますが、他方では、これに伴い権利者の権利保護のための異議申立ての受付期間が短くなります。

実務における注意点:日常的な商標モニタリング制度を構築することをお勧めします。冒認出願、類似商標を発見した場合、必ず公告から2か月の法定期間内に異議を申し立てなければならず、期限を過ぎると異議申立ての権利を喪失してしまいます。

 

4.失効商標の隔離期間規則の最適化(第49条)

【新法条文原文】

商標登録者がその登録商標の放棄を申請した場合、放棄の公告の日から1年間、国務院商標管理部門は、他人が同一又は類似の商品において当該商標と同一又は類似の商標の登録を出願しても、登録を認めない。

改正の解説:

現行法:1年の隔離期間は、商標が取り消された場合、無効を宣告された場合、期間満了後に更新されなかった場合の3つの状況に適用されます。

新法:1年の隔離期間は権利者が自ら放棄を申請した商標にのみ適用され、起算点は放棄の公告日となります。当該制限は「他人」のみを拘束し、元の商標権者は隔離期間の制限を受けず、同一の商標を再出願することができます。

実務における注意点:当該見直しは、出願可能なより多くの商標リソースを解放することができ、商標出願人にとって有利な内容となっておりますが、他人が自ら放棄した商標については、依然として1年の隔離制限に留意する必要があり、同一/類似の商品に直ちに出願することはできません。

 

5.悪意の登録の判定の明確化、買い占めや冒認出願の取締り(第19条、第50条)

【新法条文原文‑第19条】

使用を目的とせず、かつ通常の生産・経営の必要性を明らかに超えて商標登録を出願した場合、登録を認めない。欺罔又はその他の不正な手段により商標登録を出願してはならない。

【新法条文原文‑第50条】

すでに登録されている商標が、本法第15条、第16条第1項、第17条乃至第19条、第25条の規定に違反している場合、国務院商標管理部門は当該登録商標の無効を宣告する。他の組織又は個人は、国務院商標管理部門に当該登録商標の無効宣告を請求することができる。

改正の解説:

新法は悪意の登録の明確な判断基準を画定しました。真の使用意図がなく、自身の通常の経営ニーズを明らかに超える大量の商標出願は認められません。すでに登録が認められている悪意の商標は、無効を宣告される可能性があります。

実務における注意点:商標を出願する際、出願範囲は自身の実際の経営計画と合致させる必要があります。単なる買い占め、短期間に使用しない商標を大量に登録することは、出願を拒絶される、又は登録後に無効宣告、取消しの対象となるリスクがあります。

 

6.当局が職権により不使用商標を整理することが可能に(第57条)

【新法条文原文】

登録商標がその指定商品の普通名称となった場合、又は正当な理由なく連続して3年間使用されていない場合、いかなる組織又は個人も、国務院商標管理部門に当該登録商標の取消を請求することができる。国務院商標管理部門は、請求を受領した日から9か月以内に決定を下さなければならない。特別な事情により延長の必要がある場合、国務院商標管理部門の責任者の承認を経て、3か月延長することができる。登録商標に前項に定める事由がある場合、国務院商標管理部門は当該登録商標を取り消すことができる。具体的な規則は国務院商標管理部門が定める。

改正の解説:

第三者による「連続して3年間使用されていない場合の取消し(撤三)」請求制度が維持されています。また、既存の不使用商標の整理を加速させるため、商標主管機関が職権により自ら審査し、正当な理由なく長期にわたり不使用となっている登録商標を取り消す権限を新たに付与しています。

実務における注意点:不使用商標が当局の主導により取り消されるリスクが著しく高まりますが、当該職権による条項がどのように運用されるかについて、現時点では実施細則がまだ公布されておらず、今後の関連規則による運用手順の明確化が待たれます。登録商標を所有する主体は、このリスクに対抗するために少量の実際の使用を行うことを検討できます。

 

【補足:現行の請求に基づく「連続して3年間使用されていない場合の取消し(撤三)」手続規則(今回の商標法改正内容ではなく、本条に関連する現行の規則となりますが、併せて紹介します)】

また、2025年5月26日の「正当な理由なく連続して3年間使用されていない登録商標の取消請求」ガイドライン改正版の施行以降、現行の請求に基づく「連続して3年間使用されていない場合の取消し(撤三)」規則にはすでに実質的な調整が加えられています。旧規則の下では、請求人は請求を提出して簡単な説明を行うだけで「連続して3年間使用されていない場合の取消し(撤三)」手続を開始することができ、すべての立証責任は商標登録者にありました。新規則の下では、請求人は受理資格を得るために規範的な初期調査証拠を提出する必要があり、プラットフォームの網羅性不足、スクリーンショットにおける要素の欠落、調査の深さ不足は、いずれも請求に対して補正を命じられるか、又は不受理となることを招く可能性があります。もっとも、請求が受理された後も、依然として登録者が商標に使用行為が存在すること、又は不使用の正当な理由が存在することを、証拠を提示して立証することとされています。

 

7.公衆を欺罔し、誤認させる商標登録と使用の厳罰化(第19条、第56条、第67条)

    【新法条文原文‑第19条】(前の第6部分を参照)

【新法条文原文‑第56条】

公衆を誤認させる方法で登録商標を使用した場合、商標法執行担当部門が期限を定めて是正を命じ、違法経営額が5万元以上のときは、違法経営額の5倍以下の過料を科すことができる。違法経営額がない、又は違法経営額が5万元未満のときは、25万元以下の過料を科すことができる。期限を過ぎても是正しないときは、国務院商標管理部門がその登録商標を取り消す。

【新法条文原文‑第67条】

商標代理機関に次に掲げる行為のいずれかがあった場合、商標法執行担当部門が期限を定めて是正を命じ、1万元以上10万元以下の過料を科し、情状が重いときは、10万元以上20万元以下の過料を科す。直接の責任を負う主管者及びその他の直接の責任者に対しては警告を与え、5千元以上5万元以下の過料を併科し、情状が重いときは、5万元以上10万元以下の過料を併科する。

(中略)

  • 委託者が登録出願する商標が本法第15条、第16条第1項、第19条、第21条、第22条、第24条に定める事由に該当することを知っていた、又は知っていたはずであるにもかかわらず、その委託を受けたとき
  • 本法第25条の規定に違反する、又は本法第54条に定める事由があるとき
  • その他の不正な手段により商標代理市場の秩序を乱したとき

商標代理機関に前項に定める行為があり、情状が重いときは、国務院商標管理部門は当該機関が取り扱う商標代理業務の受理を停止する決定を下し、これを公告することができる。

改正の解説:

大量の悪意の冒認出願及び買い占められた商標の大部分は、代理機関を通じて手続が行われており、このような代理機関が商標をめぐる不正の横行を助長し、悪循環を生み出す大きな要因となっていると言えます。今回の改正では、出願の段階において、欺罔性があり、公衆を誤認させやすい商標を出願した場合、出願人及び規定に違反して委託を受けた代理機関のいずれも法的責任を負う必要があります。使用の段階において、商標の実際の使用過程で消費者を誤認させた場合、高額な過料が科されます。是正を拒否した場合、登録商標は直接取り消される可能性があります。

実務における注意点:商標標識自体及び商標の実際の使用場面のいずれにおいても、商品の品質、原料、産地、機能に関して、虚偽の又は誤認を生じさせる表示を行ってはなりません。

 

8.著名性の当局による確認制度の新設、海外における権利保護の強化(第69条)

【新法条文原文‑第69条】

国外における商標登録の審査、審理又は商標案件の処理過程において、商標が中国国内の関連公衆に広く認知されていることを証明する必要がある場合、国務院商標管理部門は当事者の請求に応じ、本法第63条の規定に従い、商標の著名性について確認を行うことができる。

改正の解説:

中国ブランドのグローバル展開に伴い、国外における商標の冒認出願は、中国の海外進出企業が頻繁に直面する構造的リスクとなっています。これまで中国企業が海外で権利保護を行う場合、中国国内における商標の知名度を自ら立証する必要があり、立証の手続は煩雑でかなりのコストがかかっていました。新法では全く新しい制度が創設されました。企業が国外における商標案件を処理する際、中国の商標主管機関に対し、商標の著名性に関する事実について当局による確認書の発行を申請することができ、当該文書は国外案件の審理において権威ある証拠とすることができます。

実務における注意点:日常的に、中国市場における販売データ、広告宣伝、市場の報道等の証拠を継続的に収集し、保存することをお勧めします。海外における商標の冒認出願に遭遇した場合、この制度を活用して立証の負担を軽減することができます。

 

まとめ・アドバイス

今回の法改正は、適法な出願人の権益の保障、ブランド保護力の強化の両立を図ると同時に、商標の買い占め、悪意の冒認出願、商標の不使用、誤認を生じさせる使用等の行為を厳しく取り締まるものとなっています。商標出願人に対する実務上のアドバイスとして、以下の4点を提示します。

a)新法を踏まえて商標出願戦略を見直し、出願範囲を自身の実際の業務に合致させること
b)日常的な商標モニタリングを実行し、2か月の異議申立期間に細心の注意を払うこと
c)商標に関するすべての使用証拠を体系的に保管し、連続して3年間使用されていない場合の取消し(撤三)、著名性に関する事実の確認等の各種手続に対応すること
d)クロスボーダーブランドの権利保護に関する事項への対応に際し、新法が規定する著名性確認制度を有効に活用すること

以上


*本記事は、一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。