第12回 会社の適切な会議の実施に関する規則 – 第1部

皆さん、こんにちは。Poblacionです。今日は、会社での会議を開催する際の注意点についてお話しましょう。

瑕疵のある会議で承認された行為や決議は、取締役又は株主が異議を唱えた場合、対抗措置を受け、無効を宣言される可能性があります。最悪の場合、不適切な会議の進行にあたり不当性又は過失のあった取締役や役員が、法律違反の責任を負わされる可能性もあります。そのため、会社での会議を適切に招集し実施することは非常に重要です。

それでは、取締役会及び株主総会を適切に招集し実施するためには、どのような手段を取る必要があるでしょうか?会社の付属定款には一般的に、会社の会議を招集及び実施する時期、場所及び方法について、具体的要求事項が規定されていなければなりません。また、フィリピン会社法の定める要件も満たしていなければなりません。

A. 取締役会

頻度

取締役会には以下の2つの種類があります。

(a) 定例取締役会
(b) 臨時取締役会(取締役会で協議すべき至急案件がある場合に実施)

会社は、事業上の必要に応じて、定例取締役会開催の頻度を自由に決定することができ、付属定款において、定例取締役会を例えば毎週、毎月、隔月又は四半期毎に開催すると規定することができます。なお、付属定款にそのような日程が記載されていない場合、会社法には別途規定がなければ定例取締役会は毎月開催するものとする、と明記されています。

一方、臨時取締役会は、社長の招集によりいつでも開催することができます。また、付属定款において社長に代わり臨時取締役会を招集する権限を有する他の役員として、取締役会長又は取締役の過半数を指定することもできます。

会議の場所

取締役会はフィリピンの国内外を問わず、どこでも開催することができます。よって、取締役会は、日本又はアメリカでの会議を適切に設定することもできます。ただし、付属定款に特定の会議場所が規定されている場合は、これに従わなければなりません。

通知

定例又は臨時の取締役会の通知は、会社の付属定款に別途期間が明記されている場合を除き、少なくとも会議開催日の1日前までに取締役一人一人に送付されなければなりません。取締役会の通知は、通常、会社秘書役が作成します。通知は書面で作成し、会議の日時及び場所だけでなく、議題や会議の際に取り上げられる事項についても記載されている必要があります。

インターネットが普及しているこの時代、電子メールで通知を送付することも可能かと疑問に思われるかと思います。証券取引委員会(SEC)の意見では、原則として会議の書面通知は通常郵便で送付しなければならないとされています。しかしながら、会社の付属定款に規定されていれば、電子メールによる送付も認められます。そのため、電子メールで通知を送付する場合は、電子メールによる通知の送付方法、取締役の電子メールアドレスの記録、変更及び確認に関する仕組みについても規則を定めておく必要があります。

なお、取締役のFacebookのページにテキストメッセージを送付したり掲示したりする通知方法が認められるか否かは、今後の判断を待つことになるでしょう。

では、もし通知に瑕疵があった場合、例えば、会社の付属定款に取締役への通知を電子メールで送付してもよいという規定がないにもかかわらず、電子メールで送付した場合、どうなるでしょうか。会議の招集に瑕疵があると会議は不公正なものとなり、その会議で採択された決議は、会社に対する拘束力を有しません。ただし、会社法の規定によれば、取締役は、明示的にあるいは黙示的に通知要件の制限を受けない場合もあります。例えば、電子メールで送付された会議開催通知に対し、取締役が受領確認メールを返信した場合や取締役が実際に会議に出席している場合、その通知は瑕疵ある通知とはみなされないでしょう。

定足数

定款に定められた取締役の人数の過半数が出席していれば、定足数は満たされます。有効な会社行為には、定足数の過半数以上の賛成票が必要とされます。例えば、構成メンバーが5名の取締役会の場合、3名の取締役で定足数が満たされ、(会議に出席した取締役が3名だけであると仮定すると)拘束力のある決議の承認に必要なのは、2名以上の取締役による賛成票です。当然ながら、会社の定款又は付属定款で定足数をもっと高く規定することもできます。

会議の実施

付属定款に別段の規定がない限り、社長が取締役会の議長を務めます。

取締役らは、原則として、実際に集まって会議をする必要がありますが、SECは、電話会議又はテレビ会議で取締役会を行うことも認めています。電話会議又はビデオ会議を有効に実施するためには、下記の要件を満たす必要があります。

  • 会社秘書役が、付属定款に従って会議通知を送付する。電話回線又はテレビ会議システムによる会議の開催が意図されている場合、通知には以下のことが必要である。

(a)取締役に、会議に直接出席するか、電話回線/テレビ会議システムを通じて出席するかの問い合わせおよび会社秘書役またはそのスタッフの連絡先番号
(b)議題
(c)会議の場で協議予定の文書のコピー

  • 電話回線/テレビ会議システムによる出席を希望する取締役は、会議予定日の5日前までに会社秘書役にその旨伝えなければならない
  • 会議開始時、会社秘書役は出欠確認をする。取締役及び参加者全員が、自分の氏名及び現在地を述べ、これを記録に残す。電話回線/テレビ会議システムによる参加者については、以下のことが求められる

(a)他の参加者の発言が十分かつ明解に聞き取れることを確認する
(b)議題及び会議に必要な全文書を受領しているかを述べる
(c)電話回線/テレビ会議システムに使用されている装置の種類を特定する

  • 参加者は全員、発言の前に名乗り、会議中にお互いの発言が明確に聞き取れ、お互いが見える状況でなければならない。名乗らずに発言した者がいた場合、会社秘書役はその直後に最後の発言者を特定する。
  • 会社秘書役は、直接又は電話回線/テレビ会議システムを通じて会議に出席し締役に対し、議事録への署名を要求する。
  • 会社秘書役には、以下の役割がある。

(a)会議の整然性を守ること
(b)優良な電話回線/テレビ会議システム装置及び設備の準備をすること
(c)進行を記録し、議事録を作成すること
(d)テープ録音に、会社の記録の一部としての印を付し、保管する

株主総会の招集及び実施に関する規則については第2部でお話します。


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。