第76回 「会社登記強制抹消制度実施弁法」の概要
2023年の会社法改正により、会社登記の強制抹消制度が創設されました。この制度の確実な実施、会社登記の強制抹消手続きの規範化、そして経営主体の撤退メカニズムの整備を図るため、国家市場監督管理総局は2025年9月5日に「会社登記強制抹消制度実施弁法」を公布しました。本弁法は10月10日より正式に施行されます。
1. 強制抹消とは
簡単に言えば、長期間経営しておらず、抹消も自主的に行っていない「ゾンビ会社」を市場から法的に一掃することです。
本弁法の具体的な適用対象は以下のとおりです。
会社が営業許可証を取り上げられ、閉鎖を命じられ、または取り消された日から3年以内に登記の抹消を申請しない場合、登記機関は強制抹消手続きを開始することができます。
法令等で抹消前に審査許可を受ける必要がある旨が明確に規定されている金融や医療などの特殊な業種にかかわる会社などである場合、本弁法は適用されませんのでご注意ください。
2. 強制抹消手続きの流れ
強制抹消手続きは、大きく分けて3つの段階があります。
第1段階:公告
公告は、国家企業信用情報公示システムにおいて90日間行われます。
公告には、会社名、住所、法定代表者、統一社会信用コードまたは登録番号、予定されている登記強制抹消の法的事由、法的根拠、予定されている登記強制抹消に対する意見、異議申し立ての方法、公告の開始日と終了日などが記載されます。
第2段階:異議申し立て期間
債権者、関係部門、その他の利害関係者は、異議を申し立て、関連資料を提出することができます。
登記機関は7業務日以内に審査を完了し、異議が認められる場合、強制抹消手続きを終了します。
第3段階:抹消の決定
異議がない場合、または異議が認められない場合、登記機関は「登記強制抹消決定書」を発行、送達し、国家企業信用情報公示システムにおいて特別注記を行い、公示します。
3. 強制抹消の結果
会社の法人格は終了します。但し、元の株主と清算義務者の責任は強制抹消によって消滅するわけではありません。
4. 「復活」は可能か
以下のような訴訟または事件等に係わる場合、登記の回復を申請できます。
(1)立件され調査を受けているところである、行政強制措置を講じられているところである、または過料などの行政罰を受け、まだ執行が完了していない場合
(2)訴訟、行政不服審査、仲裁、調停、執行などの手続き中である場合
(3)破産または清算手続き中である場合
(4)その他、登記の回復が確実に必要な場合
登記機関は、関係部門、債権者、その他の利害関係者が申請を提出した場合、7業務日以内に審査した後、会社の登記を復活させるか否かを決定することができます。また、会社登記機関はその職権で会社の登記を復活させることもできます。
元の会社名が既に他者により登録され、使用されている場合、統一社会信用コードまたは登録番号のみが復活し、元の会社名は復活しないことにご注意ください。
5. 法的責任
異議申立てまたは登記の回復を申請する際に虚偽の書類を提出した場合、最高10万元の過料が科せられる可能性があります。
また、強制抹消手続きが終了した、または登記が回復された会社は、速やかに清算を行い、法律に従って登記の抹消を申請しなければなりません。強制抹消手続きの終了日または登記の回復日から3年を経過しても会社が登記の抹消を申請していない場合、会社登記機関は強制抹消手続きを再開することができます。
6. 終わりに
会社が強制抹消された場合、株主は信用が損なわれるだけでなく、関連する責任をも引き続き負わなければなりません。株主は、会社を登録したら、法に従って経営管理しなければならず、「放任して管理しない」ことはできません。
以上
*本記事は、一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。
