第83回 小企業会計準則関連事案紹介

【背景】

業績が好調な零細規模の外資系貿易会社A社(従業員数6人)は、設立以来、「小企業会計準則」を採用してきましたが、今年の年度監査の際、会計士より「企業グループ内の親会社と子会社は、中国国内法に基づき設立された企業に限られず、また、1,000万人民元以上5,000万人民元未満の営業収入があるため、『小企業会計準則』ではなく、『企業会計準則』を採用すべきである」との指摘を受けました。果たして、親会社が日本企業である中国国内の外資系貿易子会社A社は、「小企業会計準則」を引き続き適用することができるのでしょうか。それとも「企業会計準則」に変更しなければならないのでしょうか。

【弊所の見解】

「小企業会計準則」第2条に基づき、中華人民共和国の領域内に法律に基づいて設立され、「中小企業類型判定規定」に定められる小企業が「小企業会計準則」が適用されるが、企業グループ内の親会社及び子会社が除外されます。即ち、中華人民共和国の領域内に法律に基づいて設立される企業グループ内の親会社及び子会社が通常、「小企業会計準則」の適用対象ではなく、「企業会計準則」の適用対象であります。なお、2024年、財政部が公式サイト[1]でのQ&Aを通じて、中小企業の規模区分基準における「除外対象」となる企業グループ内の親会社・子会社とは、「中国国内法に基づき設立された企業」を指すと明確に回答しています。

つまり、企業グループ内の親会社が外国企業である場合、中華人民共和国国内にあるその子会社は、たとえ中小企業の規模区分基準において中小企業に該当したとしても、会計基準の適用に関するこの除外規定の対象とはならず、当該中小企業は「企業会計準則」を適用することも、「小企業会計準則」を引き続き適用することも可能です。

一方、「小企業会計準則」第2条及び「中小企業類型判定規定」第4条によれば、卸売業の場合、企業グループ内の親会社・子会社(親会社、子会社ともに中国国内法に基づき設立された企業)に該当しない限り、企業の類型は以下のように規定されています。

中規模:従業員数20人以上、かつ営業収入5,000万人民元以上
小規模:従業員数5人以上、かつ営業収入1,000万人民元以上
零細規模:従業員数5人未満、かつ営業収入1,000万人民元未満

したがいまして、A社の場合、法令に照らせば「小規模」企業に該当する可能性が高いため、「小企業会計準則」の適用は引き続き可能であると考えられます。

さらに、「小企業会計準則」の適用が可能な企業は、同準則第3条に基づき、自らの選択により、「小企業会計準則」と「企業会計準則」のいずれかを適用できます。ただし、一度「企業会計準則」を選択すると、後から「小企業会計準則」に戻ることはできません。

なお、実務上の観点から申し上げますと、「企業会計準則」を選択する場合、その基準に精通した財務担当者を配置する必要があり、関連する会計処理は非常に手間がかかるため、年度監査の費用も大幅に増加すると言われています。そのため、従来から「小企業会計準則」を適用している企業については、通常「企業会計準則」への変更は推奨されず、営業収入が数十億人民元規模の企業でも「小企業会計準則」を適用しているケースは少なくありません。

以上を踏まえますと、A社は「小規模」企業に該当する可能性が高いため、従来通りの「小企業会計準則」を適用することによる法的なリスクは低いと考えられます。むしろ、一度「企業会計準則」に移行すると、実務上の負担やコストが増大し、かつ後戻りができないため、変更をご検討の際は慎重に判断されるべきであると考えます。

[1] http://www.mof.gov.cn/bd/mhwzzxly/lyxd/index_2.htm

以上


*本記事は、一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。