第87回 労働契約法における「客観的状況の重大な変化の発生」が適用される状況
「労働契約法」第四十条第三号では、労働契約の締結時に拠り所とした客観的状況に重大な変化が生じ、労働契約の履行が不可能になり、使用者と労働者の間で協議しても労働契約の内容の変更について合意できなかった場合、使用者は三十日前までに書面で労働者本人に通知するか又は労働者に1か月分の賃金を支払うことで、労働契約を解除することができる旨が定められています。しかし、どのような状況が「客観的状況の重大な変化の発生」と認定され得るのかについて、現行の「労働法」及びその他の国レベルの法律、行政法規では明確な定義がなされておりません。1994年に旧労働部弁公庁が発表した「〈労働法〉の若干条文に関する説明」(労弁発〔1994〕289号)において、「客観的状況」について原則的な説明がなされ、不可抗力又はその他の原因により労働契約の条項の全部又は一部が履行不可能となった状況(例えば企業の移転、合併、資産移転など)を指すとの見解が示されているだけです。もっとも、この解釈が形成されたのは計画経済から市場経済への路線転換の初期であり、現在の高度かつ複雑で多様な経営環境や組織形態に全面的に対応するのは明らかに困難であり、その適用の境界は実務上、常に挑戦を受けています。
一、組織構造の調整は「客観的状況」を構成するか?
規範化の立ち遅れにより、司法実務上、「客観的状況の重大な変化の発生」の理解と適用においては明らかな見解上の相違が存在します。特に、使用者が組織構造の調整のため部署又は職務を廃止するという高頻度で論争が生じる状況は、その中でも最も典型的なものです。多くの地域の裁判文書を整理しまとめると、関連裁判における見解はおおよそ次の二つに分類されます。
(一)否定説
組織構造の調整は企業の自主的な経営管理の範囲内の意思決定行為に該当し、内部管理上の変更であって、「労働法」における意味上の「客観的状況の重大な変化の発生」と認定すべきでないとする考えです。
(二)肯定説
組織構造の調整は往々にして、外部の経済動向、業界内の変化又は経営環境を踏まえた企業による対応策であり、それ自体には指向性はなく、一定の条件を満たしていれば「客観的状況の重大な変化の発生」の範疇に入れられるべきだとする考えです。
上記の見解上の相違の根源は、一部の裁判所が、「客観的状況」の認定に際し、「関連変化が企業内部の意思決定に起因したものであれば一律にその客観性を排除する」という簡略化された判断基準を採用したことにあります。このような「内部の意思決定か否か」を唯一の基準とする手法は、経営上の意思決定の背後にある外部からの圧力及びその客観的属性を軽視するものであり、その偏狭な視点のために全体像を見過ごしがちです。
二、「客観的状況の重大な変化の発生」の認定の手段及び基準
法律法規に明確な定義が欠けている状況下では、「民法典」における情勢の変化に関する規範の主旨を参考にして、その構成要件を体系的に理解することができます。情勢の変化は、「締結契約時に予見不能」、「商業リスクの範囲外の重大な変化」、そして「契約の履行の継続が明らかに公平性を欠く」という特徴を備えていなければなりません。労働法の特殊性を考え合わせると、「客観的状況の重大な変化の発生」は、以下の要件を満たさなければなりません。
(一)「客観性」と「予見不能性」
企業が通常の経営活動で引き受ける予見可能な商業リスク、例えば市場に関する判断ミス、経営戦略の見直し、コスト管理の必要性などのリスクは、原則として企業が自身で解決すべきであり、当然に「客観的状況の重大な変化の発生」を構成するわけではありません。逆に、組織構造の調整が、労働契約締結時に合理的に予見することが不可能であり、かつ企業自身の責に帰し難い外部の重大な情勢の変化に起因するものであった場合には、「客観的状況」の属性を備えていると考えられます。
(二)「非指向性」と「普遍性」
関連変化は、一部の従業員又はごく少数の人員のみを対象とするものではなく、少なくとも、一つの部署、一つのビジネスライン又は相当規模の従業員群に影響を及ぼすものでなければなりません。例えば、(2025)京02民終332号事件では、使用者が趙という従業員一名のみの職務調整を行い、その所属先の部署は変わらず存続し、かつ人員の規模にも変化がなかったことから、裁判所は「客観的状況の重大な変化の発生」があったことを否認し、解除行為は違法と認定しました。
(三)労働契約の履行の継続が不可能であること
「履行が不可能」というのは、形式的な職務調整で成立し得るわけではなく、例えば、「もとの職務が本当に、完全に廃止されており、かつ代わりとなる合理的な職務が存在しない」「労働契約を継続した場合、契約締結時の合理的な予想を明らかに超える不公平な雇用コストを企業が負担せざるを得なくなる」というような、実際に差し障りがある程度にまで達していなければなりません。例えば、(2024)粤01民終27815号事件では、社会保障政策の見直しによって関連業務の需要が完全に無くなり、企業がもとの職務の従業員を留め置くとすれば「振り当てられる仕事はないのに賃金を支払う」しかない状況であったことから、裁判所は契約の履行の継続は明らかに公平性を欠くと認定しました。
以上をまとめると、組織構造の調整が「客観的状況の重大な変化の発生」を構成するか否かは、それが企業内部の意思決定に起因するという理由だけで一律に否定することはできず、また、当該条項の適用範囲を恣意的に拡大すべきではありません。関連変化の客観性、予見不能性や、かかる変化が商業的リスクという属性に該当しないこと、その影響の範囲及びそれにより実際に労働契約の履行が不可能となったか否かを全面的に審査しなければならず、さらには、組織構造の調整の真の動機・原因を深く分析し、それが果たして、効率の最適化を積極的に追求する企業の経営上の自主的な選択なのか、それとも予見不能で、その責に帰すことのできない外部の重大な事態に迫られた受け身の対応なのか判断する必要があります。複雑な市場環境下で必要となる企業の経営上の自主権及び生存の余地を尊重し、企業が真実でかつコントロールできない劇的な情勢変化に遭遇したときに法に基づいて解除権を行使するのを認めると同時に、使用者が当該条項を濫用し解雇に関する法定の保護の仕組みを回避して労働者の適法な権益を損なうことがないようにしなければなりません。
以上
*本記事は、一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。
