インドネシア資本市場:IDXの新上場規則

 インドネシア証券取引所(「IDX」)は現在、金融庁(「OJK」)と共同して、IDX上場一般規定に関する上場規則第I-A号に対するIDX理事会指令第Kep-00183/BEI/12-2018号を修正する新たな規定(「I-A改正規則案」)の最終案を策定しています。
 
前記の現行規定改正案は、規則を緩和し、オンライン マーケットプレイスであるBukalapak.comが近く予定している上場を促すことになると思われます。Bukalapak.comは、8月のIDXメインボード新制度を活用する最初の会社になると予想されています。配車サービス大手のGojekとマーケットプレイス運営会社のTokopediaの持株会社であり、評価額180億ドルの国内最大新興テクノロジー企業でもあるGoToが、Bukalapak.comのすぐ後に続くことでしょう。

 現行の上場規則を改正するのは、IDXを、前記のようなテクノロジー企業にとって魅力的な新規上場(「IPO」)場所とするためです。その目的は、より多くのテクノロジー企業を、シンガポール証券取引所や香港証券取引所のような他の市場ではなく、IDXで上場するよう誘引することです。

 現行のIDX上場規則の改正案に関する様々な情報源から以下のとおり重要点をいくつかまとめました:

 1.IDXIDXメインボードの上場要件を緩和: IDXは、I-A改正規則案において、規則を緩和し、赤字経営ではあるが需要が高く急成長している新興テクノロジー企業が上場場所としてIDXを選択するよう促しています。

 現行規則の下では、株式を発行しようとする会社がIDXメインボードに登録されるには、以下の要件を満たす必要があります:

 ①1000億インドネシアルピア以上の正味固定資産を有すること;
 ②事業開始から連続3(三)年以上経過していること;及び
 ③直近の会計年度に営業利益が計上されていること。

 I-A改正規則案において、IDXは、株式を発行しようとする会社が充足すべき要件として、5(五)つの代替的条件が認められるような修正をしています。その条件を、以下に具体的に挙げます。(i) 正味固定資産及び営業利益;(ii) 過去2(二)年間の税引前総収益及び時価総額;(iv) 総資産及び時価総額;(v) 過去2(二)年間の累積営業キャッシュフロー及び時価総額。

上記により、インドネシア企業がIDXメインボードに上場される機会が拡大するとと期待されています。

 2. IDXが自由変動相場規則を修正 現行の上場規則では、「公開株」という用語が使用されています。これは、主要株主でも支配株主でもない複数の株主に基づき判断されます。

 IDXは、前記定義の修正を提案し、I-A改正規則案では「浮動株」という用語を使用しています。ただし、現行のIDX規則第V.1条に規定されている7.5%という最低浮動株比率は、新しい規則でもそのまま適用されます。

 3. IDXがデュアル・クラス・シェア・ストラクチャの上場を許可:I-A改正規則案において提案されているもう1つの大きな修正点は、複数議決権株式(「MVS」)を伴うデュアル・クラス・シェア・ストラクチャ(「DCS」)の導入です。

 IDXは現在、DCS及びMVSの導入に向け、かかるストラクチャに最適な市場慣行を可能にする枠組みを見極めようと法的調査を実施しています。DCS及びMVSストラクチャがIDXにより認められれば、これらのストラクチャを認めている他の世界的証券取引市場の前例にならうことになるでしょう。Google、SEAグループ(Shopeeの持株会社)及びAlibabaを含む多くの世界的テクノロジー企業がMVSストラクチャの下で上場しています。
 ただし、IDXが、前記企業のDCS及びMVSストラクチャによる株式公開を認めるか否かはまだ不透明です。

 かかる規則は、MVS保有者が、その所有権の割合より大きい議決権を有することを可能にします。MVSは、会社の主要人物である設立者の支配権を維持するために導入されます。

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新しい上場規則が制定された場合には、本件に関する最新情報をあらためてご提供します。


*本記事は、一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆】
Nusantara Legal Partnership
Marshall Situmorang(パートナー),Audria Putri(シニア アソシエイト),
Aniendita Rahmawati(アソシエイト)