インドネシア決済システム規則:インドネシア銀行新決済システムの法的枠組みに関するよくある質問

 インドネシア中央銀行(「BI」)は、2025年の決済システム計画に対して同行が概要を示したインドネシア決済システム改革に関し、以下に適用される3つの新規則を発行しました。(i) 決済サービス運営者(「PJP」)及び (ii) 決済システムインフラ運営者(「PIP」)。前記の3つの新規定は、安全で信頼性が高く経済的な電子決済エコシステムの確立を目的としています。

BIがインドネシアの決済システム運営者に対して定めた新規定に関し、よくある質問を以下のとおり一覧にしました。

1.BIが定めた決済システム運営者向け法的枠組みはどのようなものか? 

BIが発行した決済システム運営者向け法的枠組みは以下のとおりです。

(i) 決済システムに関するBI規則第22/23/PBI/2020号、
(ii) 決済サービス運営者に関するBI規則第23/6/PBI/2021号(「PJP規則」)、及び
(iii) 決済システムインフラ運営者に関するBI規則第23/7/PBI/2021号(「PIP規則」)

(以下、(i)、(ii) 及び (iii) を総称して「決済システム規則」という)

2021年7月1日のPJP規則及びPIP規則の制定により、以下の規則が廃止となり差し替えられました。

(i) 決済システム及びルピア通貨管理の規制監督に関するBI規則第18/9/PBI/2016号、及び
(ii) 送金に関するPBI第14/23/PBI/2012号に関する許認可規定

さらに、下記規則の実施細則は、新決済システムに適合している限り、今後1(一)年間有効に存続します。

(i) カード決済手段業務に関するBI規則第11/11/PBI/2009号及びその改正
(ii) 決済取引処理業務に関するBI規則第18/40/PBI/2016号
(iii) 金融テクノロジー業務に関するBI規則第19/12/PBI/2017号、並びに
(iv) 電子マネーに関するBI規則第20/6/PBI/2018号

2.PJP及びPIPの業務内容は?

PJP: PJP規則第2条(1) に基づき、PJPは、以下の業務を遂行することができます。

(i) 口座情報サービス(「業務1」)。これには、ユーザの承認に基づき決済指示伝達のために口座情報を提供することを含みます。
(ii) 決済指示伝達/取得サービス(「業務2」)。これには、決済取引の伝送を含みます。
(iii) 口座保証サービス(「業務3」)。これには、決済取引の承認を含みます。
(iv) 送金サービス(「業務4」)。これには、資金源が送金サービス業者から発案されたものではない送金指示の受諾及び実行を含みます。

PIP: BIの規定により、PIPは以下の2つの業務を遂行することができます。

(i) 清算サービス。これには、決済処理前のPIPメンバーの権利義務に関する調整、確認及び算定を含みます。
(ii) 決済サービス。これには、清算処理に基づきPIPメンバーの口座に借方勘定及び貸方勘定を計上することにより、最終的かつ拘束力のある決済を実施することを含みます(PIP規則第2条(1))。

PJPとして活動するには、まずBIから事業許可を取得する必要があり、PIPはBIによる認定を受ける必要があります。


3.新BI規則ではPJP/PIP許認可制度はどのように規定されているか?

PJP許可 BIは、PJP許可を、以下のとおり資本金要件の異なる3つのカテゴリーに分類しています。

許可カテゴリー

許可される活動

資本金要件

カテゴリー1

活動1、2、3及び4

当初払込済資本金150億インドネシアルピア以上

カテゴリー2

活動1及び2

当初払込済資本金50億インドネシアルピア以上

カテゴリー3

活動4及びBIから割り当てられるその他活動

当初払込済資本金が、

a. 他のPJPが使用できるシステムを提供しないPJPの場合、1000億インドネシアルピア以上、又は

b. 他のPJPが使用できるシステムを提供するPJPの場合、10億インドネシアルピア以上

: 銀行という形態のPJP(「PJP銀行」)には、銀行セクターに関する現行法規に基づき適用される資本金要件が引き続き適用されます(PJP規則第24条(3))。

 PJPの許可は、取り消されない限り有効に存続します。PJP許可の発行者であるBIは、三年毎に、または必要と考えるいかなる時点で、発行済みの各PJP許可を評価する権利を留保しています。

PIP認定 PIP規則第26条(2)に従い、PIPとして活動しようとする者がBIからPIPとして認定されるためには、当初資本金1000億インドネシアルピア以上という要件を満たす必要があります。

BIによる適格性審査 PJP許可又はPIP認定の申請過程中、BIは、以下に対する適格性審査を実施することができます。(a) 株式の25%を所有する株主、又はPJP/PIPに対して直接又は間接の実質的支配権を有する株主、及び (b) PJP/PIPの見込み取締役及び理事。

決済システム開発業務の承認又は報告 新決済システム規則は、決済システムサービス/製品の開発及び提携に関する承認又はBIへの報告を義務付けています。

 開発又は提携のリスクが低いと思われる場合、PJP/PIP業者は、これに関する報告書をBIに提出します。一方、PJP/PIP業者が、中程度又は高度のリスクを伴う開発を決済システムに対して実施する場合は、事前にBIの承認を取得する必要があります。

4. PJP業者及びPIP業者の外資比率に上限はありますか?

 BIは、顧客の保護を確保しつつ、インドネシアの決済システム革新を促進するため、PJP業者及びPIP業者には、以下の株式構成及び内国資本要件が適用されると規定しています。

機関

備考

PJP銀行以外

– 全株式の15%以上及び議決権付株式の80%以上;並びに

– 取締役及び理事を指名する特別な権利、議決権等を伴う株式(「特別権付株式」)は、インドネシアの個人又は会社(「現地人」)が所有していなければならない。

PIP銀行以外

– 全株式及び議決権付株式の80%以上;並びに

– 特別権付株式は、現地人が所有していなければならない。

 
 上記に加え、BIには、その独自の裁量により、PJP及びPPI候補の株式保有率及び支配権についてさらなる評価基準を定めることが認められています。

5.新決済システム規則は、既存のPJP/PIPの許認可を受けた者にとってどのような意味があるか?

新決済システム規則は、既存のPJP/PIPの許認可を受けた者にとって以下のような意味があります。

(i) 既存のPJP/PIPが新決済システム規則を遵守するためには、当初払込資本金を増額する必要がある;さらに
(ii) BIは、既存のPJP許可/PIP認定による新決済システム規則の遵守を査定し、転換を実施する。BIは、今後2、3年の間にかかる許可を受けている既存の業者について追加評価を実施し、当該許可/認定を有効に存続させるか、取り消すべきかを判断する。

********

本稿の情報は、一般的な性質のもので法的助言として扱われるべきものではなく、いずれの者もいかなる状況にも本稿の情報に依拠してはならない。特定の状況に対応するには、関係者が具体的な法的助言を求める必要がある。


*本記事は、一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆】
Nusantara Legal Partnership
Marshall Situmorang(パートナー),Audria Putri(シニア アソシエイト),
Aniendita Rahmawati(アソシエイト)