第17回 「新」ネガティブリストの制定

皆さん、こんにちは。Poblacionです。2015年5月29日、第10次ネガティブリストが大統領令184号として制定されました(「ネガティブリスト」については、第8回 フィリピンのアンチ・ダミー法についての考察でも触れています)。第10次ネガティブリストは、3年前に発行された第9次ネガティブリストに代わるものとして発行され、フィリピン国籍を有する者に対してのみ全面的に、あるいは部分的に投資が認められている分野が列記されています。第10次ネガティブリストのコピーは、こちらからご参照頂けます。

それでは、第10次ネガティブリストにおける特徴を見ていきましょう。

①第10次ネガティブリストでは、多くの職業(エンジニア、医師、建築士、他)がリストから外されました。現在リストに残っている職業分野は以下の通りとなっています。

(1) 薬剤師 (2) 放射線・レントゲン技師 (3) 犯罪捜査 (4) 山林管理 (5) 弁護士

第10次ネガティブリストで削除された職業分野については、フィリピン国籍を有する者が当該職業に就くことを認めている国の出身者である外国人に限り、フィリピンでその職業に就くことが許可されます。

貸付会社、ファイナンス会社、及び投資会社は第10次ネガティブリストから「削除」されてはいますが、これらの会社に外国資本100%の企業が認められるようになったわけではありません。第10次ネガティブリストの脚注には、貸付会社について現在でも外国資本が49%以下に制限されること、並びに、ファイナンス会社及び投資会社について外国資本が60%までしか認められないことが明記されています。

②第10次ネガティブリストの脚注には、以下の特記事項があります。

    • 外国資本企業が公共事業の運営組織に加入できるのは、当該企業の資本出資率と同じ割合を上限とする。すなわち、外国資本が40%である水道会社は、5名の取締役会メンバーのうち外国人の取締役を2名まで選任することができる。また、公共事業の執行役員及び経営役員は全て、フィリピン国籍を有していなければならない。例えば、フィリピン国内でフランチャイズを経営する水道会社の社長又は総支配人は、フィリピン国籍を有する者でなければならない。
    • コンテスタブル市場の電力会社及び電力供給会社(注:この場合のコンテスタブル市場とは、電力のエンドユーザに供給業者を選択できる能力があることをいう)は、公共事業とはみなされないため、外国資本が40%を超えていても認められる。
    • 教育機関の統括及び管理は、フィリピン国籍を有する者にのみ認められる。

一方で、第10次ネガティブリストにおける変更は単なる「化粧直し」に過ぎない、という声が多く聞かれます。なぜなら、「新」ネガティブリストは、外国資本に対する制限を緩和するものではなく、現行の法律で既に認められている慣行を具体的に示しているだけだからです(特に、外国籍の者がフィリピンで特定の職業に就くことを互恵的に認めている点)。第9次ネガティブリストが発行された2012年から現在まで、外国資本に対する制限について規定した法律の改正や廃止は一切ありません。事実、物議を醸し出し議論の対象となっている外国資本に対する制限(例えば、土地の所有、公共事業の運営及びマスメディアの運営)は未だに存在しています。こうした議論の対象になっている制限は、既に憲法に規定されており、これらの制限を廃止するためには、面倒で時間のかかる憲法改正の手続を経なければならないため、すぐに撤廃されることはおそらくないでしょう。

多くの事業団体が、政府に対しネガティブリストの「ネガティブ項目削減」を要求しています。憲法による経済的制限の撤廃を求める法案も議会で審議中です。このような努力が実を結ぶかどうかは別として、これから数ヶ月か数年(あるいは数十年!)見守っていくしかないでしょう。


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

当事務所 フィリピン弁護士 Krizelle Marie F. Poblacion

フィリピン大学法学部次席卒業。2010年フィリピン司法試験6位合格。フィリピンのPoblador Bautista & Reyes法律事務所に勤務し、フィリピンにおける事業展開の様々な側面に関する助言及び支援を国内企業及び多国籍企業に提供。専門は、フィリピンの会社法及び商標法。2014年、配偶者の海外赴任に帯同して来日。同年11月に黒田法律事務所での勤務を開始以来、日本企業による対フィリピン投資事案を専門に扱う。