第9回 取締役会(董事会)会議の日台の違いについて

前回に引き続き、日本の会社法(以下「日本法」といいます)と台湾の会社法(以下「台湾法」といいます)における、取締役会(董事会)の違いについてご紹介します。今回は取締役会(董事会)会議の違いを見ていきましょう。

1 定足数及び決議要件

日本法において、取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席(定足数といいます)し、その出席取締役の過半数をもって行う(決議要件といいます)ものとされています(日本法第369条第1項)。

また、定款により、定足数及び決議要件を加重することも可能です(同項括弧書き)。

台湾法においては、董事会(日本法の取締役会に相当)の決議は、会議に出席できる董事(日本法の取締役に相当)の過半数が出席し、その出席董事の過半数をもって行うものとされています(台湾法第206条第1項)。

日本法では「議決」に加わることができる取締役が、台湾法では会議に「出席」できる董事が定足数の基準となっていますが、この違いが出るのが決議に特別の利害関係を有する取締役(董事)がいる場合です。日本法では、特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない(日本法第369条第2項)ため定足数に含まれません。一方、台湾法では、特別の利害関係を有する董事は議決に加わることができません(台湾法第206条第4項、第178条)が、会議に出席することは制限されていない(2002年5月16日経商字第09102088350号通知)ため定足数に含まれます

また、台湾法では日本法と異なり、定款により定足数や決議要件の加重を可能とするような明文の規定はありません。実務上、従前は定款により加重することが可能とされていました(2011年2月23日経商字第10002403260号通知)。しかし、現在ではこの通知は廃止されており、加重を可能とする明文の規定がある場合を除いて、定款により加重することができないものとされています(2019年5月8日経商字第10802410490号通知)。

2 テレビ会議、電話会議

日本法において、各取締役は必ずしも物理的に取締役会の開催場所に出席する必要はなく、テレビ会議や電話会議の方式による出席も可能とされています(日本法施行規則第101条第3項第1号、福岡地方裁判所平成23年8月9日判決参照)。

しかし、電話会議については、遠隔地の取締役を含む各取締役が一堂に会するのと同等に、自由に協議ないし意見交換ができる状態になっていることを要するとされており、開催場所にいる取締役が、その場にいない取締役に電話し意見を聴きながら議事を進めるのでは足りないとされた裁判例があります(上記福岡地方裁判所平成23年8月9日判決参照)。

台湾法においても、視覚的通信手段によって董事会が開催される際、董事が当該手段を通じて会議に参加した場合、自ら出席したものとみなされます(台湾法第205条第2項)。

しかし、テレビ会議と異なり電話会議では董事の自由意志が確認できないため、このような方法で開催された董事会に出席した董事は出席したとみなすことができないと解されています(台中地方裁判所2010年度訴字第694号民事判決の見解)。

3 代理出席

日本法において、株主総会決議についてはその代理行使の規定があります(日本法第310条)が、取締役会決議についての代理行使の規定はありません。取締役会では個々の取締役に1議決権があることから、他の取締役に代理行使を委任することが予定されていないものと考えられています。

しかし、台湾法においては、他の董事に代理出席させることが可能です。董事は他の董事に代理出席を委任する際にはその都度委任状を作成しなければならず、かつ議題を参照の上、委任状に授権範囲を明記しなければなりません(台湾法第205条第3項)。また、代理人は1人の董事からの委任しか受けることができません(同条第4項)。 

なお、以前は、董事が海外に居住している場合、書面により台湾に居住する他の株主に代理出席を委任する方法もありました(これを経常代理といいます)。

しかし、上記のように、現行法がテレビ会議による董事会への出席を認めていることから、2018年に経常代理の規定は廃止されることになりました。

4 議事録の作成義務

日本法において、取締役会の議事録が書面をもって作成されている際には、出席した取締役及び監査役がこれに署名(本人による自筆で氏名を記載すること)又は記名(印字など本人による自筆以外の方法で氏名を記載すること)押印しなければなりません(日本法第369条第3項)。また、電磁的記録にて作成することも可能です(日本法第369条第4項)。

台湾法においては、董事会の議事録を作成し、議長がこれに署名又は押印をしなければなりません(台湾法第207条第1項、同条第2項、第183条第1項)。

台湾法においては、押印が署名と同じ効力を持つ(台湾民法第3条第2項)と規定されており、日本法と異なり押印の際の「記名」が要求されていません。

また、台湾法においては、日本法と異なり「出席者」による署名又は押印が要求されていませんが、出席を証明するため別途出席名簿を作成し出席者が署名又は押印をするのが通常です。そして、同じく電磁的記録にて作成することも可能です(台湾法第207条第2項、第183条第2項)。

5 議事録の保存義務

日本法において、取締役会議事録は取締役会の日から10年間その本店に保存されなければなりません(日本法第371条第1項)。台湾法においては、董事会議事録は会社の存続期間中永久に保存されなければなりません(台湾法第207条第2項、第183条第4項)。

 

日本法 台湾法

定足数及び決議要件

・取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その出席取締役の過半数で行う(日本法第369条第1項)

・董事会の決議は、会議に出席することができる董事の過半数が出席し、その出席董事の過半数で行う(台湾法第206条第1項)

・特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない(日本法第369条第2項)ため定足数に含まれない

・特別の利害関係を有する董事は、会議に出席することは制限されていない(2002年5月16日経商字第09102088350号通知)ため定足数に含まれる

・定款により、定足数及び決議要件を加重することが可能(同項括弧書き)

・定款により、定足数及び決議要件を加重することができるとする明文の規定がなく、実務上もできないとされている(2019年5月8日経商字第10802410490号通知)

代理出席

・他の取締役に代理行使を委任することが予定されていないものと考えられている

・他の董事に代理出席を委任することが可能

・その都度委任状を作成しなければならず、かつ議題を参照の上、委任状に授権範囲を明記しなければならない (台湾法第205条第3項)

・当該代理人は1人の董事からの委任しか受けることができない(同条第4項)

テレビ会議

・テレビ会議による出席も可能(会社法施行規則第101条第3項第1号、福岡地方裁判所平成23年8月9日判決参照)

・テレビ会議による出席も可能(台湾法第205条第2項)

電話会議

・電話会議は可能であるが、遠隔地の取締役を含む各取締役が一堂に会するのと同等に自由に協議ないし意見交換できる状態になっていることを要する(上記福岡地方裁判所平成23年8月9日判決参照)

・電話会議では董事の自由意志が確認できないため、このような方法で開催された董事会に出席した董事は出席したとみなすことができないと解される(台中地方裁判所2010年度訴字第694号民事判決の見解)

議事録の作成義務

・取締役会の議事録を作成し、出席者が署名又は記名押印(日本法第369条第3項)

・董事会の議事録を作成し、議長が署名又は押印(台湾法第207条第1項、同条第2項、第183条第1項)

・電磁的記録にて作成することも可能(日本法第369条第4項)

・電磁的記録にて作成することも可能(台湾法第207条第2項、第183条第2項)

議事録の保存義務

・取締役会の日から10年間その本店に保存(日本法第371条第1項)

・会社の存続期間中永久に保存(台湾法第207条第2項、第183条第4項)

以上


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 三代川 英嗣

法科大学院において知的財産法のゼミに所属した際、中国をはじめアジアの法律家との交流を重ねたことをきっかけに、渉外法務、知財法務を専門とすることを志し、司法試験では知的財産法科目1位で合格。司法修習修了後、上海の復旦大学に短期留学し中国語および中国法を学習。 今後は中国法、台湾法、知財法のみならず、ビジネスやテクノロジーについての理解を深め、クライアントに最適なリーガル サービスを提供できるよう、日々努力を積み重ねていきたいと考えている。