第335回 オンライン教育サービスの約款

新型コロナウイルス感染症の流行を受け、オンライン教育の需要が日増しに高まっています。消費者の権益を保障するため、経済部は「オンライン教育サービス約款において記載しなければならない事項および記載してはならない事項」(以下「本事項」という)を公布し、5月15日に発効しました。本事項の内容について以下の通り簡単に紹介します。

必要記載事項

記載しなければならない事項について以下のように規定されています。

企業が消費者に優遇価格でのオンラインカリキュラムを提供した場合、その総額がオンラインカリキュラムのライセンス料となり、契約の各種費用の計算基準としなければなりません。返金の際にも「定価」によって使用済みの部分を計算してはなりません。

なお、企業が「プレゼント」の名目で消費者にポイント数またはレッスンを贈呈した場合、契約終了後または解約の際に返還するよう請求してはなりません。また、返金費用から当該プレゼントの額を控除するよう主張することもできません。

記載してはならない事項

記載してはならない事項について、以下のように規定されています。

消費者が費用の前払いによりポイントまたはレッスンを購入した場合、企業は使用期限を記載してはなりません。ただ、双方が前払い金について特定の用途を指定していた場合は、例外的に使用期限を約定(やくじょう)することができます(例えばテスト前ラストスパートコース、夏休み先取り学習コースなど)。

なお、企業は自動契約更新による課金方式により契約を延長してはなりません。

また、契約の有効期間内に重大なシステム異常、または授業内容の誤り、教材ミスの状況が3回以上発生し、企業が規定に従って修復または是正しない場合、消費者は企業に契約の終了を通知することができます。企業は拒否してはならないほか、契約終了前に未使用であった本サービスのライセンス料に相当する金額を割合に応じて消費者に返金しなければなりません。

さらに、消費者の前払い期間が1年を超え、かつ前払い金額が5万台湾元(約18万円)を超える場合、消費者が支払った費用を回収できなくならないように、企業は5万元を超過する金額部分について第三者預託を行わなければなりません。

台湾でオンライン教育のサービスを提供する意思がある場合、本事項の内容に注意しなければなりません。違反かつ当局から期限内に是正するよう命令を受けても是正しなかった場合、当局は消費者保護法により3万元以上30万元以下の過料に処すことができます。再度、期限内に是正するよう命令し、期限が来ても是正しなかった場合、5万元以上50万元以下の過料に処す、かつ回数に応じて処罰することができます。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。