第11回 試用期間の日台の違いについて

1 試用期間とは

雇用者は労働者を正式に雇用する前に一定の期間を設定し、その期間内に労働者の勤務態度、人格、技術、能力等を観察してから正式に雇用するかを決定する必要性があり、この一定の期間を試用期間といいます。

2 試用期間の有効性

試用期間の有効性については、日本法においても、台湾法においても特段規定がありませんが、試用期間の長さが合理的で、雇用者と労働者の双方の合意があれば、有効であると考えられています。

3 試用期間の長さ

日本法においては、特段規定がなく合理的な範囲で期間を自由に決定することが可能です。

台湾法においては、従前は「労働基準法施行細則」において期間が40日を超えてはならないと規定されていましたが、現在ではこの規定が削除されており、日本法と同じく合理的な範囲で期間を自由に決定することが可能です。

日本法においても、台湾法においても、実務上は3ヶ月とされることが多くなっています。

4 試用期間中の解雇

日本法においては、試用期間中の解雇は「解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合に許される」とされており、「通常の雇用契約の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由がみとめられてしかるべき」とされています(最高裁平成2年6月5日神戸弘陵学園事件判決)。

台湾法においては、試用期間においても労働契約を終了させる際には、台湾労働基準法第11条、第12条が定める解雇事由が必要(労委会86年度台労資(二)字第35588号通知)とされており、労働者が業務を担当する能力を確かに備えていない場合(台湾労働基準法第11条第5号)には、雇用者は労働契約を終了させることができます。また、台湾の裁判例においても、解雇事由の証明の程度を軽減すべきと判示したものがあります(台湾高等法院102年度労上字第82号民事判決)。

5 解雇手続

上記の通り、日本法と台湾法では試用期間に関する規制が似ていますが、解雇する際の手続は異なります。

日本法においては、試用期間が14日を超えている労働契約を終了させる場合には、解雇予告が必要となり「30日前」に予告する必要があり、30日前に予告しない場合には、「30日分以上の平均賃金」を支払う必要があります(日本労働基準法第20条第1項本文、第21条但書き)。

このように、日本法では解雇予告をした場合には、解雇予告手当を支払う必要がありません。

 台湾法においては、試用期間においても労働契約を終了させる際には、台湾の労働基準法第16条、第17条が定める手続を行うことが必要とされています(労委会86年台労資(二)字第35588号通知)。試用期間が3ヶ月以上1年未満の労働契約を終了させる場合には、解雇予告が必要となり「10日前」に予告する必要があります(台湾労働基準法16条第1項第1号)。そして、労働契約を終了させる場合には、勤続1年ごとに月平均賃金の半分、勤続1年未満の場合は、勤務月数に比例した額を支払う必要があります(台湾労働者退職金条例第12条第1項)。

このように、台湾法では試用期間が3ヶ月以上である場合には解雇予告をした上でさらに解雇手当を支払う必要があります。また、試用期間が3ヶ月未満である場合には解雇予告は不要となりますが、解雇手当は支払う必要があります。

 

日本法

台湾法

規定


なし


なし

期間制限


規定はないが、3ヶ月が多い。


規定はないが、3ヶ月が多い。

解雇事由


解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合に許される(最高裁平成2年6月5日神戸弘陵学園事件判決)


労働者が業務を担当する能力を確かに備えていない場合には、雇用者は労働契約を終了させることができる(労委会86年台労資(二)字第35588号通知、台湾労働基準法第11条第5号)

解雇予告


試用期間が14日を超えている
労働契約を終了させる場合は、30日前(日本労働基準法第20条第1項本文、第21条但書き)


試用期間が3ヶ月以上1年未満の労働契約を終了させる
場合は、10日前(台湾労働基準法16条第1項第1号)

解雇(予告)手当

予告しない場合には、「30日分以上の平均賃金」(日本労働基準法第20条第1項本文、第21条但書き)


労働契約を終了させる場合
には、勤続1年ごとに月平均賃金の半分、勤続1年未満の場合は、勤務月数に比例した額(台湾労働者退職金条例第12条第1項)

 

以上


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 三代川 英嗣

法科大学院において知的財産法のゼミに所属した際、中国をはじめアジアの法律家との交流を重ねたことをきっかけに、渉外法務、知財法務を専門とすることを志し、司法試験では知的財産法科目1位で合格。司法修習修了後、上海の復旦大学に短期留学し中国語および中国法を学習。 今後は中国法、台湾法、知財法のみならず、ビジネスやテクノロジーについての理解を深め、クライアントに最適なリーガル サービスを提供できるよう、日々努力を積み重ねていきたいと考えている。