第1回 裁判所の早打ちに注目!

みなさん、初めまして〜。

私は、黒田日本外国法律事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友浩樹と申します。佐田友は「さだとも」と読みまして、出身地の広島でも親戚以外は聞いたことがない姓です。覚えにくい名前かもしれませんが、何とぞよろしくお願いいたします。

まず、自己紹介を簡単にさせてください。大学を卒業してから総合家電メーカーに入社。入社1年目に、北京、広州にトレーニーとして赴任。帰国後は購買職能。トータル約8年間勤務した後、思うところがあり退社。司法試験の勉強を始め、ロースクールに入学し、弁護士資格を取得。2010年に黒田法律事務所に入所し、主に広州での勤務を経て、今回、縁あって台北で働くことになりました。

台北に来てからは約2カ月になります。これから台湾で見た、知った、意外な、びっくりした、驚きの台湾事情を(「そこまですごいっ!!」っていう話はないかもしれませんが)本紙面をお借りして、お伝えしていきたいと思います。

第1回は、台北の裁判所に出かけ、少しの時間ですが傍聴してきましたので、日本の裁判と異なり「面白い」と思った点をいくつかご紹介いたします。

まず、最初に行ったのが、台北市中正区貴陽街にある台北高等法院(裁判所)の民事法廷ビルです。そこで、まず目についたのは、各法廷の入り口の横にあるモニターです。当日の各法廷のスケジュールがモニターに記載されており、進行具合も確認できます。日本では当日の開廷表(紙ベース)が各法廷の入り口に貼ってあるだけです。なかなか、便利でよいと思いました。日本は法務省の関係予算も厳しいので、ここまではやらないんですかね〜。

同行した台湾人弁護士に、「モニターは故障しないのっ?」って聞いたところ、「故障したら紙を貼って代用するので大丈夫です」とのこと。なるほど。確かに、それで事足りますね。後で知ったのですが、全ての法廷の入り口にモニターがあるわけではないようで、台北の地方裁判所にはモニターのない法廷もありました。

それから、実際の裁判も傍聴しました。一番インパクトに残ったのが、書記官の「早打ち」です。「なにそれ?」って思われますよね。口頭弁論の際に、当事者が裁判官からの質問に答えた内容を書記官がものすご〜いスピードでパソコンのキーボードをたたいて記録化していくんです。日本の裁判所には、猛スピードでキーボードをたたく人はいませんが、速記官がいる場合はあります(全ての裁判所に速記官がいるわけではないです。速記官がおらず、証言などを逐語で記録化する際には、録音を民間業者に委託して文書にしてもらっているようです。この方法では、作成までに一定の日数を要するようです)。

ただし、速記による記録をリアルタイムでモニターに表示するということはありません。理由は明確でないですが、当事者の発言を全てリアルタイムに表示できるよう文字化するのは物理的に難しいからじゃないでしょうか。

台湾の裁判所では、書記官の「早打ち」した内容が、当事者の席上にあるモニターにリアルタイムで映し出され、当事者がその内容を確認することもできました。モニターに記載された内容は事件記録として残るので、当事者はその場で訂正を求めることもできるようです。事件記録がリアルタイムに出来上がっていくのは、臨場感がありますね〜。

私が傍聴した裁判でも、裁判官からの質問に対して、当事者が北京語と台湾語を織り混ぜつつ答えていたのですが、あたかも裁判官に罵声を浴びせるような調子のセリフでも書記官は黙々とキーボードにたたき込んでいました。

日本の裁判所では、なぜ、裁判の進行に合わせ、当事者の陳述をリアルタイム表示して、記録化しないんでしょうか。あくまで推測ですが、日本語は漢字だけの中国語と異なり、平仮名や片仮名も混じるので、変換のスピードが中国語よりも必要となるからではないでしょうか。実際に、日本で台湾スタイルを導入することは物理的に難しいのでしょう。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。