第9回 「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」

みなさん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

台北を吹く風に冷たさを感じるようになってきた今日この頃ですが、そろそろ忘年会シーズンですよね。火鍋などをつつきつつ、ビールを飲んだり、お付き合いで高粱酒を飲むような機会が増えるのではないでしょうか。

日本人でも車の運転をされる方が比較的多い台湾ですので、飲酒運転に関し、台湾でも厳しく処罰されているということを紹介したいと思います。

台湾では、昨年から飲酒運転の全国取り締まりを強化するなど、飲酒運転対策を強化しています。飲酒運転の基準とされる数値についても厳格化され、日本の道路交通法施行令で定められている数値と同じである、呼気一リットルにつき〇・一五ミリグラム以上のアルコールが確認された場合には、処罰されることになっています。ちなみに処罰の内容ですが、1万5000新台湾ドル以上9万新台湾ドル以下の罰金や免許取消しなどが規定されています。

台湾の飲酒運転対策は効果が表れており、内政部の公告によれば、今年の1月から5月までの飲酒事故の死亡者数が前年に比べ51人も減って、125人となったそうです。3割近くも減っているので、すごく効果が表れているといえますね!!日本の飲酒死亡事故件数が昨年のデータで年間256件(死亡人数ではありません)でした。台湾の人口が日本の約5分の1であることを考えると、日本に比べるとまだ台湾の方が、飲酒死亡事故が起きる確率は高いといえそうです。

日本では、飲酒が原因の悲惨な交通事故を契機として、刑法に危険運転致死傷罪が規定され、一定の要件の下、人を負傷させた場合に15年以下の懲役、人を死亡させた場合には30年の懲役にまで処することが可能になりました。台湾にも、酒を飲んで車を運転し人を死亡させた場合の規定が刑法にありますが、法定刑は1年以上7年以下の懲役にとどまります。

台湾の交通犯罪に対する厳罰化は日本ほど進んでいないということができますね。日本では、飲酒して正常な運転が困難なドライバーの運転する車に同乗して、運転を黙認した者に対しても、危険運転致死傷罪のほう助の罪が成立するという判例があります(この点、台湾においては、台中でのみ同乗者を処罰する運用がなされているようです。同僚の台湾人から聞いたのですが、運用に地域差があるというのもユニークですね〜)。

以上のように、飲酒して自らハンドルを握ってはいけませんし、飲酒した人の車の運転を黙認することも許される行為ではありません。悲惨な事故を起こす側になるのはなんとしても避けなければなりませんし、みなさんも飲酒事故に巻き込まれるのは絶対に嫌ですよね!!内政部の公告にも日本と同じように「酒後不開車,開車不喝酒(飲んだら乗るな、乗るなら飲むな)」という言葉が使われていました。どこでも一緒ですよね。お酒を飲んで運転することは絶対にやめましょう〜。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。