第10回 「家族」について

みなさん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

台湾に駐在の皆さまの中には、単身赴任で家族と離れて業務に打ち込まれている方もたくさんおられることと思います。単身赴任の方々にとっては、年末年始や旧正月は久しぶりに家族団らんを楽しめるときですよね。寒い寒〜い日本に戻ることになりますが、家族との再会を楽しみにもうひと頑張りですね〜。

「家族」と一言で言いますが、現在の日本には「家族」を法的に定義した規定はありません(「親族」については規定あり)。最近では、飼い犬を家族の一員としていて、自分の死後は、飼い犬と一緒のお墓に入るという方もおられるようですし、老後は友人とグループホームで同居するという方もおられるようです。これらも新しい「家族」のカタチと言えるのかもしれませんね。

これに対して、台湾では「家族」について、民法で明確に定義されているんです。具体的には、まず、「家」について、「家とは、永久に共同生活を営む目的をもって同居する親族団体をいう。」という定義がなされています(日本には「家族」と同様、「家」について定めた規定もありません)。そして、「家にはそれぞれ家長を置く。同一の家に所属する人は、家長を除いて、均しく家族とする。」と規定されているんですね〜。

この規定を初めて見たときは、とてもびっくりしました。「家長」ですよ!!私などは昔話として伝え聞いている、『食事は「家長」が箸をつけるまでは食べてはいけない』とか、『一番風呂は「家長」が入るものだ』とかの、あの「家長」です。ちなみに私の母親は1945年生まれですが、子どものころ、父親に背中(お尻)を向けたら、すごく怒られたことがあると昔を思い返して言っていましたが、これも「家長」制度の残滓なのかもしれませんね。

少し話がそれましたが、台湾では現行法上も「家長」がいて、「家」を「家長」とともに構成するのが「家族」なんですね〜。それから、ユニークだと思ったのが、台湾では、「親族でない人であっても、永久に共同生活を営む目的をもって一つの家に同居するときは、家族とみなされる。」という規定があり、血がつながっていなくても法的な意味で「家族」になれるんです。つまり、「老後は友人と同居」することで、友人と法的な意味でも「家族」になれる場合があるってことになります。法的な「家族」になることで、お互いが扶養義務を負うことになります。

ちなみに、台湾民法には「親族会議」についても規定があって、5人以上で組織することなどが規定されているんです。「親族会議」の果たす役割として、例えば、「相続開始の時点で、相続人の有無が不明である場合、親族会議は一箇月以内に遺産管理人を選任し、かつ相続の開始及び遺産管理人の選任について法院に報告する」という規定がありますし、他にも扶養の方法を決定したり、遺産の給付に関与したりと果たすべき役割がいくつも民法上に存在しています。日本人の感覚からすれば、実際に機能しているのかなぁと思ってしまいますが、法文上、明記されていますので、全く機能していないというわけではないようです。

法律はその時々の時代を映していく必要があると考えますが、台湾民法には、多少、現代にマッチしていない規定が残っているように思われます。血の繋がっていない友人と互いに扶養義務を負う「家族」になれると上述しましたが、実際に、友人同士で「家長」と「家族」になることが、どれほどあるんでしょうね〜。台湾人の同僚に聞く限り、そのようなケースはほとんどないようです。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。