第41回 ペットに関わる責任について

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

少し前になりますが、事務所旅行で北海道に行きました。久しぶりの北海道で、美味しい食事をいただき、花盛りのラベンダー畑などを見ることができて、とても楽しかったです。宿はトマムのホテルだったのですが、非常に多くの台湾からの観光客でにぎわっていました(当日、台湾人の同僚が感じた印象によれば、トマムのホテルにいるのは「中国人より台湾人が多い」とのことでした)。ホテル側としても、このような中華圏から来られる観光客のために、中国語が話せる従業員の確保は必須のようで、たまたま話を聞いた従業員は、台湾の彰化の方でしたよ。彼女は、そのホテルからの台湾での募集に応募して採用されたと聞きました。中国や台湾を含む海外からの観光客が北海道の観光を支えている実態を垣間見たような気がします。海外からの観光客の方にも、北海道をいっぱい楽しんでもらって、ぜひリピーターになってもらいたいものですね〜。

さて、本日は、ペットの飼い主(占有者)が負う責任について書いてみます。

台湾に駐在されている方やその家族の方の中には、台湾でペットを購入し、可愛がられている方もおられると思います。ペットは日本で購入するよりは、かなり安価に購入できるようですので、ペット好きの方にとっては嬉しい限りですよね〜。ただし、飼っている動物が人に損害を与えたときなど、被害者に対する損害賠償責任を台湾でも負わねばらない場合がありますので、注意が必要です。

台湾における動物が損害をもたらした場合の規定は、日本と同様に民法に規定があり、「動物が損害をもたらした場合、その占有者はこれにより生じた損害について被害者に賠償する責任を負う。」とされています(所有者ではなく、占有者、つまり、実際に動物を連れている人の責任として規定されています)。もちろん、常に損害賠償責任を負うわけではなく、「動物の種類及び性質に従い相当の注意を払って管理していた場合」など免責される場合もあります。私が見た台湾のニュースで、男性が連れている犬を見て、「可愛い」と感じた女性が、男性の同意を得ることなく犬と一緒に写真を撮ろうとして、その犬に頬を噛まれたという残念な事件があり、その女性が56万元以上に上る損害賠償を男性に対して求めた裁判がありました。裁判官は、男性がひもで犬をコントロールし、近くに人を近寄らせないようにしており、動物を連れている者としての果たすべき義務を尽くしていたと認め、女性の請求を認めませんでした。

ちなみに、日本の最高裁の判例では、一般には畏怖感を与えるおそれのない小型愛玩犬でも、飼主の手を離れれば、七歳の子どもを畏怖させ、自転車の操縦を誤らせることも予測できないわけではないとして、飼主の責任を認めたケースがあります。飼主は相当の注意をもって動物を扱う必要があることがわかりますね〜。

台湾の民法には、動物占有者の責任に関し、日本の民法で明示されていない内容として、「動物が第三者、又はその他の動物により挑発され、他人に損害を与えた場合、占有者は、当該第三者又はその他の動物の占有者に対し、償還を請求できる。」という規定があります。日本でも、実際に、同様の状況であれば、事実認定次第で、挑発した第三者などの責任を追及できると考えますが、明文で挑発を行った者に対して償還請求を認めている点が日本とは異なります。

ペットは非常に可愛いものだと思いますが、飼主の方におかれましては「ペットを飼うことの責任」もしっかり理解して散歩などを行うようにしてくださいね〜。散歩中に、うっかり、ひもを離したりしちゃうと、思わぬ事故、出費につながりかねませんから。。。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。