第54回 台湾の選挙活動

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

私が暮らす台北は、朝晩はかなり涼しくなってきまして、街中で見かける人にダウンジャケットやブーツを身に着けている方が増えてきました。日本人からすると、「ダウンを着るにはまだ早くない??」って思われる方が多いのではないでしょうか。もしかすると台湾の方は、ダーウィンの適者生存ではないですが、長い時間をかけて暑さに強く、寒さには弱い体質になっているのかもしれませんね。年末も近づいてきて忘年会(尾牙)のための出し物準備に忙しい方もおられるでしょう。台湾の忘年会(尾牙)では、貸衣装を借りて来たり、女装してのダンスをするなど、かなり気合の入った出し物を用意される会社などもあるそうです。真偽は不明ですが、以前には、忘年会(尾牙)の抽選の景品に自動車があったという噂も聞いたこともあります。本当だとしたらすごい景品ですよね〜。

最近、街中で非常に目立つ存在になっているのが選挙候補者の看板です。街中の至るところで見かけますが、バスの側面にでかでかと候補者の写真が載っているのは日本では見ないですよね。台湾では当たり前なのかもしれませんが、結構なインパクトがありますよね〜。候補者の写真もいろいろでコスプレっぽい衣装を着ている人もいたり、子どもと一緒に写ったり、あの手、この手でアピール合戦です。

「まさに、熱い戦いが現在進行中なんだなぁ」と考えて、選挙運動に関して、台湾にはどのような規制があるのか興味がわき、少し調べてみました。

そこで、まずびっくりしたのですが、なんと台湾における法定の選挙活動期間はまだ始まっていなかったんです!!直轄市の市長や議員などを選ぶ選挙の投票日は今年の11月29日であり、法に定める選挙活動期間は直轄市の市長で11月14日から、議員で11月19日からようやく始まるんです(それぞれ投票日の前日から計算して15日、10日との規定があり)。街は少し前から、こんなに選挙一色なのに、実はまだ選挙期間が始まっていないというのは不思議な感じですよね。

次に、日本と台湾の法律で違っているのが、戸別訪問に関する取扱についてです。台湾の法律では特に戸別訪問が禁止されていないんですね〜。日本の法律では戸別訪問の禁止は、選挙運動における重要な原則になっています。候補者やその関係者が有権者を戸別訪問することで、何らかの利益供与がなされる可能性が高まるので、演説会場を伝えるための訪問や、ポスター掲示の許可を求める訪問などを含め、戸別訪問自体が日本では禁じられています。台湾でも、戸別訪問して何らかの利益供与がなされれば当然、違法行為にはなると同僚に聞きましたが、実際にこっそり利益供与が行われたとしても立証するのは難しいようにも思われます。

そうそう、そういえば日本の選挙では当たり前の選挙カーを私は台湾で見かけた記憶がないんですが、皆さんはいかがでしょうか。同僚に聞くと、同僚の自宅近くでは選挙カーが出没しているようなので、私がたまたま見かけていないだけかもしれませんね〜。あるいは、法定の選挙期間になると大量に出没するのかしらん。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。