第85回 電気窃盗について

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

少し前のことになりますが、台湾のゴルフの歴史について説明するボードが台北市の青年公園にあるのを見つけました。1918年に、当時、台湾を統治していた日本政府の関係者(名前は忘れました・・・)が、フィリピンを訪問した際にゴルフに触れる機会があったようで、ゴルフのクラブを20セットだか台湾に持ち帰り、現在の青年公園の場所にあった軍か政府関係の土地を整備させ、プレーしたのが台湾におけるゴルフの始まりとのことでした(日本では、神戸において外国人が1901年頃にコースを造って、プレーしたのが始まりのようです)。

ちなみに、台湾で、そのとき整備されたコースは600メート×120メートルのコースだったとそのボードには書いてありました。そのボードには写真も示されており、例えば93年、当時の総統だった李登輝氏が、前年に退任したばかりのブッシュ元大統領と一緒に台湾(淡水)ゴルフクラブでプレーしている写真もありましたよ〜。台湾のゴルフの歴史に興味のある方は、青年公園のゴルフ練習場のそばにそのボードはありますので、ゴルフ練習のついでにでも見てみられるとよいと思います。

ご存知の方もおられると思いますが、喫茶店などでコンセントを勝手に使って携帯電話の充電をする行為は、場合によっては電気の窃盗罪に当たります。これは、日本でも台湾でも同様なんです。

日本の刑法において、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」とされており、電気が財物に当たるかという論点が出てくるところですが、別途、窃盗罪や強盗罪については、「電気は、財物とみなす。」との明文の規定があります。

台湾においても若干、日本と表現が異なりますが、「電気エネルギー、熱エネルギー及びその他のエネルギー」については、窃盗罪を検討する際に、窃盗罪の対象であるところの動産として論ずるものとされています。台湾においても他人の動産を窃取する者は窃盗罪となり、喫茶店などで店の所有者の意思に反し、電気を自分や第三者のために使用する行為は犯罪に該当するんですね〜。

もちろん、最近の多くの喫茶店で、パソコンや携帯などを利用してもらいながらくつろぐ場を店側が提供するというコンセプトがあり、座席のそばにコンセントが設置されているような店では、いちいち許可を得なくても特に問題にならないのでしょうが、一応、台湾でも日本でも、犯罪として刑法に規定されており、実際に起訴されるようなケースもあることは知っておいていただければと思います。

ちなみに、台湾における動産の窃盗罪の罰則は、特に加重されなければ五年以下の懲役や500元以下の罰金とされています。日本と比べれば、軽めの罰則になっています。ただし、台湾では、一定の行為を伴う窃盗については、通常の窃盗罪より重い罰則が明記されています。例えば、住居に侵入して窃盗を行う場合、凶器を携帯して窃盗を行う場合、3人以上が集まって窃盗を行う場合、火災に乗じて窃盗を行う場合などです。火事場泥棒は通常の窃盗より悪い行為だと台湾社会では考えられているのでしょうね〜。このような台湾の加重窃盗罪の罰則は、六ヶ月以上五年以下の懲役刑に加え10万新台湾ドル以下の罰金を併科することができるものとされています。

以上から、外出先で携帯電話の充電が切れそうであせっていても、念のため、「電気窃盗犯」にならないように、店の人に確認してから充電はしたほうがよいということについて、ご理解いただけたかと思います。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。