第87回 就業規則の公開掲示

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

毎日暑い日が続きますね〜。夏の日差しにさらされていると、私は高校時代、野球部に所属していたもので、立ちくらみに耐えながら、練習に打ち込んでいた日々のことを思い出したりします。日本以上に強烈な日差しが続く台湾の夏の時期には、日射病を含む熱中症になってしまう人がたくさんいるように思うのですが、たまたまなのでしょうか、私は台湾で「熱中症で○○人が病院に搬送された」というニュースを聞いたことがありません。

台湾人の方が暑さに強いのか、はたまた、あまりにもありふれていてニュースで報道するまでもないのか、あるいは、暑いのは当たり前なので、日差しが強い時間はあまり外出しないのか、なんなんでしょうね〜。それに引き換え、日本のニュースでは、昔に比べ、「熱中症で○○人が病院に搬送された」というニュースをよく聞くような気がします。日本においては特に温暖化が進んでいるんですかね??

本日は就業規則の公開掲示に関して取り上げてみます。たまたま、最近、公開掲示について問い合わせがあり、皆さまに知っておいていただくと役に立つ内容であると考えましたので、本コラムで紹介することにいたします。

そもそも、台湾において、就業規則は、30人以上の労働者を雇用する雇用主にのみ作成が義務付けられていますが、労働者が30人未満の会社も含め、多くの会社では就業規則を実際には作成されているでしょう。そして、公開掲示について、労働基準法施行細則において、「就業規則を主管機関に届け出た後、雇用主は直ちに事業場内に公開掲示し、且つ印刷して各労働者に配布しなければならない。」とされております。

つまり、従業員に就業規則を周知するために、事業場内に公開掲示すること、さらに、従業員の数だけ印刷し、配布することが法律上、明文で求められています。就業規則は法令の改正などに応じて、修正することもあるでしょうし、その都度、印刷して全労働者に配布するのは大変ですよね?

実は、この点に関し、行政院労働者委員会(現在の労働部)から11年前に通達が出されており、就業規則のネットワーク上での掲示が許容されているんです。その通達によれば、就業規則を会社のネットワークで掲示し、且つアクセス・閲覧方法を従業員に説明し、いつでも閲覧できるようにすれば、労働基準法や同法施行細則の公開掲示の精神に合致しているとされています。従いまして、今まで、何百人もの従業員に対して、就業規則を改正のたびに印刷して渡していたという会社もあるのかもしれませんが、必ずしもそのような方法を継続する必要はないんですね〜。

ちなみに、日本においても労働基準法上、就業規則は、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することなどによって労働者に周知しなければならないとされていますが、「電子的データとして記録し、かつ、各作業場に労働者がその記録の内容を常時確認できるパソコンなどの機器を設置する」という周知方法も実務上、許容されているようです。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。