第101回 台湾で退職金をもらえる外国人

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。

最近、お知り合いになった日本人で、たまたまだと思いますが台湾で剣道をされている方が3名もおられました。剣道は柔道などに比べれば国際的に普及していないイメージでしたが、台湾には剣道の道場などもあるようで、日本が台湾を統治していた時代から、愛好家がずっといるのかもしれませんね。そのほか、台湾では日本人によるラグビーの同好会も盛んに活動されていると聞きますし、昔、打ち込んだスポーツへの情熱が台湾でよみがえっているという方が結構おられるように思います。

台湾で日本人が余暇に楽しむスポーツとして、多くの方がゴルフや野球、テニス、ジョギング、サイクリングなどをされていると思いますが、比較的マイナーと思われるようなスポーツも台湾で日本と同じようにできるケースもありますので、愛好家を探してみるのもよいかもしれませんね。(マイナースポーツの例に挙げると失礼かもしれませんが、弓道を台湾でされている人の話を聞いたこともありますよ~)。

多くの人はもらえない

さて、台湾で長期間、現地採用で仕事をされている日本人の方から時々、「私は台湾で退職金をもらえますか」と質問されることがあります。回答は「もらえる人もいるけど多くの人はもらえないでしょう」というものになります(なお、日本の会社から台湾の会社に出向されている方は、台湾の会社から退職金は原則もらえません)。

では、台湾で退職金をもらえる外国人は、どのような要件を満たしている必要があるのでしょうか。

皆さん、ご存じだと思いますが台湾では退職金制度として2つの制度が存在しています。もともと存在していた労働基準法に基づき支給されるものと、2005年7月1日に施行された労働者退職金条例に基づき支給されるものです(便宜上、前者を「旧制度」、後者を「新制度」と呼びます)。

まず旧制度に基づき、退職金を受け取れる外国人がおられる可能性があります。それほど多くはないかもしれませんが、05年6月30日以前に台湾の会社に雇用され、その後も継続して同じ会社で働き、「勤務期間10年以上、かつ年齢が60歳に達している」などの一定の条件をクリアすることで、外国人であっても退職金の支給を台湾の会社から受けることができます。

新制度は要件厳格

続いて新制度についてですが、要件が相当厳しくなります。そもそも、「台湾人と結婚し、居留許可を得て台湾で働く」という要件を満たす必要があります(その後、台湾人配偶者と離婚、死別などで一人になっても退職金の支給を受けられる可能性はあります)。それに加え、「公立学校で働く者や医療保険サービス業の医師、家事サービス業など法定の労働基準法が適用されない労働者であること」などの要件を満たさなければならず、実際には新制度に基づき、積み立てを行い、退職金を受け取れる外国人は非常に少ないことが予想されます。

現実は厳しい??

以上のように、法律上は、台湾の会社に現地採用され、働いても退職金を得られる外国人というのは非常に限られてしまいます。従業員思いの会社であれば、外国人用の独自の退職金制度があるのでしょうが、そのような会社は現実的にはそれほど多くないかもしれませんね~。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。