外国企業が台湾で上場するための条件

台湾の証券取引所には、日本のプライム市場と同格の「台湾証券取引所」と、日本のスタンダード市場・グロース市場と同格の「グレタイ証券市場」の二つがあります。前者の「台湾証券取引所」における2025年3月末時点の上場企業数は1,039社、同年4月25日時点の時価総額は約639,291億台湾元にものぼり、「台湾証券取引所」はアジア太平洋地域で最も活発に取引が行われている取引所の1つとして知られています。

これら台湾の証券取引所における上場(IPO)においては、「プライマリーIPO」と「セカンダリーIPO」の2種類が想定されています。「プライマリーIPO」とは、本社所在国で株式を公開していない外国企業が、直接台湾市場で株式を新規上場または店頭公開することをいい、「セカンダリーIPO」とは、すでに台湾政府が認定している証券市場に上場している企業が、台湾の証券取引所で株式を公開することをいいます。日本取引所グループ(JPX)は、台湾政府から上記認定を受けています。

以下、外国企業がプライマリーIPOをするための条件についてご紹介いたします。当該条件は、「一般事業」と「科技事業・農業技術事業」で異なりますが、今回は一般事業の場合に課されている主な条件についてご説明いたします。

1. 事業継続年数

申請会社あるいはそのいずれかの従属会社に3年以上の業務記録がなければなりません。

会社法上「従属会社」とは、他の会社に発行済議決権付株式の総数、或いは資本総額の半数を超えて保有されている会社を指します。外国企業がプライマリーIPOをするにあたっては、会社法上の従属会社のなかでも、外国発行人の直接持株比率が発行済議決権付株式の50%を超えているか、または、外国発行人がその出資額の50%を超えている従属会社等を指すとされています。

2. 会社規模

連結ベースで上場申請時の払込資本金あるいは純資産が6億台湾元以上、または、上場時時価総額見込みが16億台湾元以上でなければなりません。

3. 利益獲得能力

連結ベースで、直近3年間の税引前当期純利益の合計が2億5000万台湾元以上、かつ直近1年間の税引前当期純利益が1億2000万台湾元以上であり、かつ累積欠損がないことが求められています。

4. 株式分散

前提として、株主名簿上の株主数が1000人以上である必要があります。また、持株が取締役、監査役、経理人等の内部者に集中することを防止するため、台湾法においては、前述の内部者株主または当該内部者が支配する法人株主「以外」の記名株主が少なくとも500人以上存在し、かつ、これら外部株主の持株比率が会社の全発行株式数の20%以上であること、または20%には満たない場合でも、少なくとも1,000万株を超えていることが必要であると規定されています。

5. コーポレート・ガバナンス

取締役(董事)5名以上、そのうち社外取締役(独立董事)が2名以上、社外取締役のうち少なくとも1名は台湾に戸籍を有していることが求められています。

 

外国企業が台湾で上場を行うにあたっては、前述の事業継続年数・会社規模・収益能力等、複数の厳格な基準を満たす必要があるほか、情報開示や内部統制の整備も求められます。台湾の資本市場は制度が整備されており、法令面でも安定性が認められることから、一定の規模と健全な経営基盤を有する日本企業にとっては高い魅力と成長可能性を備えた市場であるといえます。台湾での上場を検討されている外国企業の皆様におかれましては、早期に準備に着手し、専門家の助言を得ながら上場手続を円滑に進めることをお勧めいたします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修 弁護士 秋口麻貴