台湾本島周辺の離島におけるカジノ設立について 〜「離島建設条例」の修正案の可決

台湾の刑法第266条、第268条には賭博罪が規定されており、公衆の出入りが可能な場所で賭博をする行為、及び営利のために賭博の場所を提供する行為は禁止されている。したがって、カジノの設立は無論、刑法の禁止の対象となる。
一方、台湾では台湾本島周辺の離島の経済発展を促進させるため、澎湖諸島(注1参照)などにカジノを開設し、外国からの観光客を誘致するという法案が議論されてきたが、本案は、カジノの設立による治安の悪化や倫理観の低下、自然環境破壊につながる恐れがある等の理由により、可決されなかった。しかし、台湾における昨今の不況下で、離島におけるカジノの設立の話題が、経済振興策の一環として、再燃した。

与党国民党の議員が提出した「離島建設条例」の修正案によると、離島に国際観光ホテルを建設する場合、住民投票の有効票の過半数の賛成により、当該観光ホテルにカジノを設置することができ、「離島建設条例」の修正により設立されるカジノ及び当該カジノにおける賭博行為は、刑法の賭博罪の規制をうけないとされている。

多くのNGOや宗教団体、及び野党はこのような「離島建設条例」の修正案に強く反対していた。反対の理由は、そもそも近隣の韓国、マカオにおいてはすでにカジノ産業が発達しており、交通が不便な台湾の離島にカジノを設立しても、韓国とマカオのカジノに対する競争力がないことから、外国人の観光客を誘致することは期待できないため、結局、カジノが誘致する観光客の殆どは自国民となり、離島ないし台湾本島の経済への刺激効果は到底期待できず、外国のカジノ投資者が、台湾国民の資金を巻き上げることになってしまうというものである。

上記のような反対意見があったものの、2009年1月12日、NGOや宗教団体等のデモで騒然となる中、立法院において「離島建設条例」の修正案が圧倒的多数の与党の国会議員の賛成により、71票対26票の大差で可決された。

「離島建設条例」の修正案によると、カジノは「国際観光度仮区」(国際観光休暇エリア)に設置しなければならないとされている。また、「国際観光度仮区」には、国際観光ホテル、観光旅行設備、国際会議展示施設、ショッピングセンター、その他観光に関するサービス施設を設置しなければならないとされている。よって、与党の説明では、今回の修正案は、カジノの設立に主眼が置かれているわけではなく、総合的な観光施設の設置に主眼が置かれている。

本修正案によると、住民投票において投票者の過半数の賛成が得られなければ、カジノは設置できないとされているが、投票の総数が有権者の過半数を超えなくても立案できるため、利益団体の活動により、簡単に住民投票の可決が得られると考えられている。

今回の「離島建設条例」の修正案では、離島におけるカジノの設置は合法化されたが、台湾本島におけるカジノの設置には触れられていない。しかし、与党の政治家の中から台湾本島にもカジノの設立を期待する声が上がっており、離島に続き、将来的には台湾本島にもカジノが設立できるように法改正がなされるのではないかと危惧されている。

(注1)台湾海峡にある、台湾本島から西方50キロに位置する島嶼部。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修