「特殊商品及び労務税条例」(贅沢税)草案について

 近年、台湾社会の貧富の差は日増しに拡大している。このような状況の中で、不動産取引の課税負担が著しく低くなり(課税負担がない場合もある。)、経済力のある人々が高額の消費を行いながら、高額の消費に相応する税金を支払わないため、台湾社会内部では、政府の無策による貧富の差の拡大というマイナスの印象が日増しに高まっている。台湾の政権当局は、日増しに増大する世間の圧力及びまもなく行われる総選挙(総統及び国会議員の選挙)に直面し、2011年3月に台湾の立法院に対し「特殊商品及び労務税条例」(俗にいう贅沢税)の草案を提出し、この草案によって、世間の不満を鎮めようとしている。

同草案によれば、いわゆる特殊商品には、保有期間が2年以内の不動産(購入してから2年以内に転売する不動産)、9人掛け以下でかつ販売価格が3百万台湾ドル以上の小型乗用車、販売価格が3百万台湾ドル以上のヨット、飛行機、ヘリコプター及び小型航空機、販売価格が50万台湾ドル以上の亀の甲羅、べっこう、象牙、毛皮及びそれらを原材料とする製品、並びに家具が含まれる。また、いわゆる特殊労務とは、1回の販売価格が50万台湾ドル以上の入会権利(ただし返金可能な保証金に該当する場合は、これに含まれない)をいう。

草案によれば、特殊商品及び特殊労務の税率は、原則として10%である。ただし、不動産の保有期間が1年以内のときは、税率は15%になる。

草案の例外規定によれば、保有期間が2年以内の不動産については、下記の場合、免税される。

    1. 不動産の所有者及びその配偶者又は未成年の子女が、合計で1軒の不動産しか有さず、かつ自らの居住用のみに供し、営業用に供さず又は賃貸用に供さない場合。
    2. 不動産の所有者及びその配偶者が、住み替えるために、先に新しい不動産を購入し、1年以内に古い不動産を売却する場合。
    3. 相続又は遺贈によって取得した場合。

この草案は、台湾現地の不動産ディベロッパーに対する影響がもっとも大きい。2011年1、2月の間、台湾の当局が本草案の起草を開始したところ、台湾現地の不動産取引の取引量が著しく下がり、取引価格も停滞し始め、その後上昇していない。

台湾当局が草案を公布してから現在まで、不動産ディベロッパーの反発の声がもっとも大きい。不動産ディベロッパーは同業組合及び彼らの世間における影響力を通じて、彼らの選挙区の国会議員に圧力をかけ、当該草案が可決されないよう又は草案の内容を再修正するよう要求している。そのため、草案がこの先可決されるか、また、実際に可決された内容が大幅に変更されるかについては、現時点では不明である。

贅沢税の課税については、不動産業に対する影響のほか、高額の自動車、贅沢品及び高額のサービスに掲げられるサービス(例えば、ゴルフクラブの会員証等)の取引が減少することが予想されるが、一般の日常的な消費活動については、ほぼ影響を受けないことが予想される。

台湾当局の行政院は、本草案が施行された場合、毎年151億台湾ドルの収入の増加が見込め、当該収入は社会福祉のために使用する予定であり、所得の分配の改善に役立たせるとしている。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修