関税優遇規定の「三角貿易」への適用(日本企業への適用)

台湾経済部国際貿易局は、5月23日(月)に、「台湾、中国の代表者は、協議の上、『三角貿易』という国際貿易形態に対し、中台経済協力枠組協定(ECFA)第7条第2項第1号の規定(商品貿易においてアーリーハーベスト計画を実施し、台湾、中国のいずれも、附属書類1に列記されるアーリーハーベスト製品について、同文書に従って、関税引き下げの実施を手配する旨の規定)が適用されることを確認した」と宣言した。

ECFA第7条第1項の規定は、製品のアーリーハーベスト計画について定めており、同条第2項第1号によれば、台湾、中国の双方は附属文書1におけるアーリーハーベスト製品について、同文書に従って、関税引き下げの実施を手配しなければならない。但し、 双方が各自、世界貿易機関(WTO)の全加盟国に対して普遍的に適用している「非臨時的な輸入関税」の税率の方が低い場合には、当該税率が適用される。

また、同条第2項第2号によれば、原産地が台湾、中国のいずれかである製品について、輸入先は輸入時にこれに対し関税優遇を行わなければならない。なお、台湾側のアーリーハーベスト製品が台湾原産の製品である場合、関税優遇の適用を申請する際、輸入者は通関時に「中台経済協力枠組協定の輸入貨物通関作業要点」第2条第1項各号の規定に従って処理しなければならない。また、業者が、原産地証明書を作成する際 (注1参照) 、輸出業者は台湾地域において登録登記しなければならず、輸入業者は中国大陸地域において登録登記しなければならない。

次に、「三角貿易」とは実際の受注場所と輸出地が異なる貿易をいう。これまで、台湾のメーカーが台湾域外において受注した後、台湾から中国に輸出する場合や、台湾の貿易業者が受注した上で、他の台湾の製造業者が中国に輸出する場合に、中国側から上記のようなECFAの関税優遇規定の適用が排除されることがあった。

経済部国際貿易局によれば、多くの業者から、「現在、台湾と中国間の経済取引活動において『三角貿易』はかなりの比率を占めており、『三角貿易』の取引形態にECFA第7条第2項第1号のアーリーハーベスト製品の関税優遇規定が適用されない場合には、多くの企業は中台の経済提携による利益を得ることができない」という意見が寄せられていた。

そこで今回、中国側と協議の上、「三角貿易」形態にECFA第7条第2項第1号の規定が適用されることが確認された。また、「三角貿易」の取引関係においては、台湾において対象製品が製造されれば、ECFAの関税優遇規定が適用可能となるため、台湾企業以外の外国企業も適用対象となり得る。例えば、日本の企業が中国から注文を受け、当該日本企業が台湾のメーカーに生産を委託して、中国に出荷する場合、ECFAの関税優遇を受け得る。

台湾当局は、「三角貿易」の形態にアーリーハーベスト製品の関税優遇規定が適用されると、更に多くのビジネスチャンスが生まれる、と強調している。

(注1) 「商品貿易のアーリーハーベスト製品に適用する臨時原産地規則の行政手続」第2条第3項前段


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修