台湾における外国の成人向け映画の著作権

台湾のインターネットメディア事業者による、自己の運営する成人向けウェブサイトにおいて、200本以上の日本の成人向け映画をアップロードし、会員に有料でダウンロードさせる行為について、映画を制作した日本の事業者から著作権を侵害し、またわいせつ物頒布に当たるとして、刑事告訴がなされていたが、これに対し台北地方検察署は捜査の上、台湾の事業者は犯罪行為を構成していないと判断し、2013年3月、全事案について不起訴処分とした。

日本の事業者は以下の通り主張していた。
「台湾の事業者がアップロードした映画は、いずれも日本の事業者が制作費を出して監督、役者、スタッフ等に共同で制作させたものであり、そこには監督が伝えたい内容及び役者それぞれの個性があるため、著作権を有するはずである。

また、台湾はWTOに加盟した後、他の加盟国と著作権の互恵保護関係も有しているため、日本において著作権を有する成人向け映画は台湾においても著作権の保障を受けるはずである。しかも、台湾の事業者は許諾なく無断で映画をアップロードして会員に有料でダウンロードさせており、当該行為は当然、著作権侵害を構成する。」

これに対し、検察官は不起訴処分書において以下の通り指摘した。
「映画の内容は性行為の過程を描写するものであり、さまざまなポルノ的要素も含まれており、社会通念上、公共の秩序及び善良な風俗に反する内容に該当し、最高裁判所の見解によれば、このような映画は著作権法の保障を受けないため、映画の制作者は著作権の享有を主張することはできない。」

また、わいせつ物頒布の疑いについては、検察官は以下の通り判断した。
「台湾の事業者は、ウェブサイトのトップページにおいてレベルごとに警告を行う等の措置を講じており、当該ウェブサイトの利用者はウェブサイトに進む前に事前に自らクリックして『18歳に達していること』、『ウェブサイトの内容を理解していること』等の内容を確認しなければならない。このように、台湾の事業者は適切な警告及び遮断措置を講じているため、犯罪を構成しない。」

成人向け映画であっても著作権法の保護を受けるべきであると考える学者も少なからず存在するが、台湾の司法実務上の著作物に対する見解は依然として極めて保守的であるため、上記のような処分がなされたものと解される。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修