「閉鎖会社」における議決権等に関する制限の緩和

新規起業を奨励するため、経済部は「閉鎖会社」に関する会社法改正草案を4月下旬に公布した。本改正は、中国の企業家ジャック・マーが「アリババ」を設立した際、ジャック・マーの持株比率は高くなかったにもかかわらず、会社の主導権を十分に握っていたケースを参考に、資本が不十分な創業者でも会社の主導権を握ることができるようにすることで、若者による起業を拡大させることを目的としている。

「閉鎖会社」とは、株主の人数が35名以下であり、かつ会社株式の譲渡が制限されている株式非公開発行会社(なお、通常の株式会社は原則として会社株式の譲渡を制限してはならないとされている)をいう。本草案によれば、閉鎖会社は、現行会社法上の株式会社に関する一般的な制限を受けないとされている。

主な改正のポイントは次の通りである。

  1. 閉鎖会社の株主間では議決権の比率を自由に約定することができる。従って、資金、株式が不十分な創業者でも、事前の約定により、株式比率を超える議決権を有することができる。なお、現行会社法では、株式会社の議決権は基本的に1株につき1個の議決権に制限されており、柔軟性がない。
  2. 無額面株式を発行することができる。なお、現行会社法の規定では、株式会社の株券には一定額以上の額面金額がなければならない。
  3. 半期に一回、利益を配当することができる。なお、現行会社法の規定では、株式会社による株主に対する会社利益の配当は年一回に制限されている。
  4. 転換社債を発行することができる。なお、現行会社法の規定では、上場・店頭登録会社等の株式公開発行会社のみ転換社債を発行することができ、非株式公開発行会社は転換社債を発行することができない。
  5. 複数議決権特別株を発行することにより、当該特別株が普通株に優先する議決権、即ち1株につき複数の議決権を有するようにすることができる。なお、現行会社法の規定では、株式会社がこのような特別株を発行することは認められていない。

本草案の内容は、将来の起業に対する影響が極めて大きく、各方面から注目されており、今後台湾に進出する外国人にとっても注目すべきものである。但し、現在、同草案は行政院による審議中であり、可決後、立法院に再び提出されて審議が行われる。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修