他人の「Line」グループを解散させることに伴う刑事責任の可能性

「Line」は近年世界各国で人気のある携帯電話通信アプリであり、台湾だけでも登録ユーザー数は1000万人を超える。Lineユーザーは多く、そのため、Lineは、家族、友人、同僚等との通常の連絡に用いられるほか、Lineのグループ機能を利用し、ユーザーをグループに招待することにより、商品の宣伝販売などの営業活動を行う企業も少なくない。

最近、このようなLineのグループ機能を使用して、営業活動を行うケースがますます増えているが、通信機能を使用したいだけのユーザーには迷惑となることがよくあるため、海外では、Lineグループを瞬時に解散させることができるとする、「円卓の騎士団」というプログラムが登場した。

しかし、このようなプログラムを使用して他人のLineグループを解散させることは、場合によっては、台湾法では犯罪行為となる可能性がある。

メディアの報道によれば、今年8月、A(13歳)が、Lineを使用した際に、ショッピンググループに招待されたため、これを煩わしく思い、「円卓の騎士団」を使用して当該グループを解散させようとした。

具体的には、まず故意に当該ショッピンググループに加入し、「円卓の騎士団」を使用して実際には存在しない偽ユーザーを作り、その後、Aがこの偽ユーザーをグループに招待するという方法であった。Aの上記行為の結果、偽ユーザーが当該ショッピンググループに加入するやいなや、数百のメンバーが同グループから退会させられ、これにより同グループ全体が瞬時に解散となった。

当該ショッピンググループを作成した企業は同グループの運営に長い時間をかけており、同グループの解散により、顧客が失われることを良しとせず、警察に刑事告訴を行った。

警察は手掛かりをたどってAを特定し、刑法第359条に定める、電子計算機使用妨害罪に抵触したとして、審理のため少年法廷に移送した。

なお、刑法第359条には、「正当な理由なく他人の電子計算機またはその関連設備の電磁的記録を入手し、削除しまたは変更し、これにより公衆または他人に損害を与えた場合、五年以下の懲役、拘留もしくは二十万台湾元以下の罰金に処し、またはこれらを併科する」と定められている。

Lineなどの通信アプリは大変便利ではあるが、悪意のあるプログラムを使用した場合、場合によっては刑事責任を負わなければならないおそれがあり、注意が必要である。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修