取引相手(または債務者)の財産状況を調査する方法

「どのように取引相手(または債務者)の財産状況を調査するか」という質問は、弊所が非常によく受ける質問である。そこで、自己でも行える、比較的容易な調査方法を、以下の通り説明する。

1.取引相手(または債務者)の土地・建物謄本を取得する

取引相手(または債務者)の会社住所、または個人の住所が分かれば、台湾の各地政事務所において、当該住所の土地・建物謄本の閲覧申請ができるため、土地、建物の所有権者を確認することが可能である。

そのほか、当該謄本からは、土地・建物の取得理由の確認、例えば、売買、相続等によって取得した等の確認ができる。

また、当該謄本からは、土地・建物の面積、持分、並びに担保の設定状態、つまり、担保権者が誰であるか、担保金額がいくらかについても確認できる。なお、通常、担保金額は、債権金額の約7割、8割になるため、 担保の金額から、さらに調査対象である取引相手(または債務者)には、どのぐらいの負債があるかを推測することが可能となる。

2.国税局より取引相手(または債務者)の財産リストを取得する

「執行名義」があれば、当該名義を以って、台湾の税務機関に対して、取引相手(または債務者)の所有する財産リストの申請、取得が可能となる。なお、「執行名義」とは、強制執行の法的な根拠となる文書を指す。主な執行名義としては、「裁判所の確定判決」 、「強制執行認諾約款がついた公正証書」、「仲裁判断」、「確定済の支払督促」などがある。

不動産、車両、株式、給与などは、台湾の国税局の課税対象となることから、台湾の税務機関は、債務者が有するこれらの財産に関する資料を保有している。そこで、税務機関の所有する財産リストにより、以下の情報を取得することができる。

  1. 土地を有する場合、土地所有権者の氏名、土地の所在地、面積、持分及び価値
  2. 建物を有する場合、建物所有権者の氏名、建物の所在地、面積、持分及び価値
  3. 車両を有する場合、車両所有権者の氏名、車両登録番号及び車種
  4. 株式を有する場合、投資先の社名、株数及び価値
  5. 給与を銀行振込で受領している場合、給与の金額と振込先の銀行名

なお、既に「執行名義」を取得していれば、上記のように詳細な情報を容易に得ることが可能であるが、「執行名義」の取得自体は、自己で行うのは容易ではないため、専門家に依頼するのが望ましい。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修