台湾法上の「違約金」について

「違約金」とは、債務の履行を確保することを目的として契約当事者が合意する、債務者が義務を履行しない場合に支払わなければならない金銭である。台湾法上、違約金は基本的に以下の二種類に分けられる。

  1. 損害賠償的違約金:これは、当事者間で、債務者は債務不履行事由がある場合には一定額の金銭を債権者に支払わなければならないと合意し、かつ当該金銭を、債務者の債務不履行時に債権者が受ける損害賠償金の総額とするものである。民法第250条には「(第1項)当事者は、債務者が債務を履行しない場合には違約金を支払わなければない旨を合意することができる。(第2項)当事者間に別段の合意がある場合を除き、違約金は、不履行による損害の賠償金の総額とみなす。当事者が、債務者は適切な時期に又は適切な方法で債務を履行しないときには違約金を支払わなければならない旨を合意している場合、債権者は債務の履行を請求することができるほか、違約金は、適切な時期又は適切な方法で債務を履行しないことによる損害の賠償金の総額とみなす。」と規定されている。
    この規定が損害賠償的違約金の法的根拠である。
  2. 懲罰的違約金:これは、当事者間で、債務者に債務不履行事由がある場合、債権者はその損害を受けた部分について賠償を請求することができるほか、さらに一定額の金銭を請求することができることを合意する場合の、後者の金銭が懲罰的違約金を指す。注意すべき点は、契約当事者が契約においてこのような懲罰的違約金の規定を設けようとする場合、単に「違約金」と記載すると通常は上記一の「損害賠償的違約金」と解されるため、「懲罰的」という文言を明記しなければならない点である。

契約当事者は制限を受けずに違約金の額を任意に規定できるのかという質問をよく受けるが、違約金の額については、基本的に契約当事者が自由に規定することができる。

但し、額が高すぎる場合(例えば、売買対象物の価値が100万台湾元しかないにも関わらず、1000万台湾元の懲罰的違約金を規定する場合など)、違約当事者は民法第252条の規定(「合意した違約金が高すぎる場合、裁判所は、適切な額に減額することができる」)に基づき、違約金を合理的な額に減額するよう裁判所に請求することができる。

契約において適切に「違約金」の条項を設ければ、相手方の違約を効果的に防止することが可能である一方で、その内容には注意が必要である。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修