外国会社が営業行為以外の法律行為を行う場合の許認可の要否

台湾法によれば、外国会社は、事前に台湾政府の許認可を受けた上で支店を設立するか、子会社を設立してからでなければ、台湾で営業行為を行うことはできない。違反した場合、会社法第19条、第377条の規定に基づき、行為者は一年以下の懲役、拘留もしくは十五万台湾元以下の罰金に処されまたはこれらを併科され、かつ自ら民事責任を負う。

しかし、外国会社が営業行為以外の法律行為を行う場合に、事前に台湾政府の許認可を受けた上で支店を設立するか、子会社を設立する必要があるかについては明文の規定はない。

この点について、最高裁は2016年9月20日16年上字第1036号判決において、外国会社が台湾の国内において営業行為以外の法律行為のみを行う場合、当該外国会社は台湾で許認可を受けていなくても会社法第371条第2項の規定に違反しないと判断した。

本件の概要は以下のとおりである。
香港のL社は10年に増資のために台湾で株主を募集した。台湾人甲は、L社の株式を引き受け、180万台湾元の出資金をL社が台北の銀行に開設した口座に振り込んだ。その後、甲とL社との関係が悪化したため、甲は「L社は台湾政府の許認可を受けていない外国会社であり、台湾で株主を募集することはできない」、「L社の増資手続は台湾の会社法の規定に違反している」、「L社は詐欺の手段により出資金を得た」などの理由でL社を提訴し、180万元および利息を返還するようL社に請求した。

最高裁は審理後、甲の全面敗訴の判決を下した。主な理由は以下のとおりである。

  1. 会社法第371条第2項では、外国会社は許認可を受けた上で支店の登記を行っていない場合、台湾国内で営業してはならないと規定されている。従って、外国会社が台湾国内において営業行為以外の法律行為のみを行う場合には、当該外国会社は、台湾で許認可を受けていなくても、上記の規定に違反しない。
  2. 本件では、L社が台湾で株主を募集し、当該株主にL社が増資後に香港で発行した新株を取得させたことは、台湾で営業行為に従事したとは言えず、そのため、会社法第371条第2項の違反とはならない。また、香港における増資行為は台湾の会社法への抵触はなく、増資手続の違法という問題も当然ながらない。
  3. 甲はL社に詐欺行為があることを証明する証拠を提出していない。

上記の通り、外国会社が営業行為以外の法律行為を行う場合に、事前に台湾政府の許認可を受けた上で支店を設立するか、子会社を設立する必要はない。もっとも、どのような行為が「営業行為」に該当するかは、外国会社には判断しづらい問題である。よって、外国企業が、台湾で各種の商談などの活動を行う前にまず台湾の法規および裁判例に精通した法律の専門家にアドバイスを求めることが望ましい。

以上


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修